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書籍名

公開買付規制の基礎理論

著者名

飯田 秀総

判型など

280ページ、A5判、上製

言語

日本語

発行年月日

2015年10月

ISBN コード

978-4-7857-2332-3

出版社

商事法務

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公開買付規制の基礎理論

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公開買付けは、商法、とくに会社法・金商法の研究者である私にとって、もっとも面白い研究対象である。なぜなら、第1に、公開買付けは企業買収をめぐる手法の一つとして多くの国で定着しているにもかかわらず、各国でその規制のあり方に違いがあり、かつ、その規制も頻繁に改正されており、未解明なことが多いからである。第2に、法学の知見が必要なのはもちろんのこと、隣接諸科学の知見も用いなければ正確な理解は困難であり、学際的な研究が必要だからである。裏を返せば、それだけ難問が山積しているということを意味する。そのような難問に対する本書の試みは、小さな一歩にすぎないが、ライフワークとして公開買付けを研究する者のささやかな挑戦の記録でもある。
 
本書は、公開買付規制のあり方を考える上で、基本的な2つの論点を検討するものである。
 
すなわち、第1は、公開買付規制における対象会社株主の保護のあり方である。この論点をどのように考えるかによって、公開買付規制の基本的な方向性が決まるといってよい。本書は、売却圧力 (公開買付けの強圧性) の問題について公開買付規制で対応すべきことを主張している。また、会社からの退出権という考え方を導入するべきかどうかを検討し、支配株主が3分の2以上の議決権を取得するような上場廃止のおそれが高まるような場合には導入の余地があるが、3分の1の議決権の取得をトリガーとする少数株主の退出権については現段階では必要ないと主張している。いずれも、公開買付規制の立法論としての方向性を打ち出すものである。
 
第2は、公開買付規制のうちの強制的公開買付制度 (3分の1ルール) の強行法規性についてである。公開買付規制が強行法規であることは当然のことと考えられてきた。しかし、理論的には、強制的公開買付制度は、支配株主と少数株主との間の利害調整という側面があり、会社法上の少数株主の保護のあり方などと密接に関連する。そうだとすると、強行法規として規定することが必要なのか、それとも定款自治を認めてもよいのか、ということについて正面から検証する必要がある。本書の結論としては、強制的公開買付制度は強行法規でなければならないという積極的な根拠はなく、逆に、強制的公開買付制度を強行法規としてはならないという積極的な根拠もないことを明らかにした。その上で、日本法のように、事実上、強制的公開買付制度からの離脱を認めるのであれば、正面からデフォルト・ルールとその離脱のルールを定めるべきであり、具体的には、強制的公開買付制度をデフォルト・ルールとし、そこからの離脱は定款で定めれば、認めてよいと論じた。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 准教授 飯田 秀総 / 2019)

本の目次

第1部 公開買付規制で解決すべき問題
 I  公開買付規制における対象会社株主の保護
  第1章 序論
  第2章 イギリス
  第3章 ドイツ
  第4章 EU企業買収指令
  第5章 総括と結論
  第6章 むすび
 II  公開買付規制の改革――欧州型の義務的公開買付制度の退出権の考え方を導入すべきか?
  第1章  問題の所在
  第2章  強圧性の問題点と解決策
  第3章 むすび
 
第2部  強制的公開買付制度の強行法規性
  第1章  問題の所在
  第2章  強制的公開買付制度は強行法規であるべきか
  第3章  デフォルト・ルールの設計と離脱の手続
  第4章  むすび
 

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