東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白とベージュの表紙

書籍名

ちくま新書 1921 法律の読み方がわかる本

著者名

白石 忠志

判型など

304ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2026年6月8日

ISBN コード

978-4-480-07750-9

出版社

筑摩書房

出版社URL

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法律の読み方がわかる本

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「法律」、「法務」、「法規」、「法学」などと呼ばれる分野に接することになった場合に、条文や判決の実物を読む力を初歩から身に付け、そのような力を武器として、関係する法的な領域を歩き回れるようになるには、どうすればよいか。この本は、そのような状況を想像しながら書きました。
 
条文や判決は、難しいものではありません。普通の現代日本語で書かれています。もちろん、若干の約束事はあります。しかし、若干の約束事は、ほかの専門分野にも多くあるのではないでしょうか。条文や判決を読む際の若干の約束事を、具体例とともに整理してお伝えします。
 
ところが、これまで、条文や判決のうち特に条文に関しては、読み方や約束事を初歩から整理して伝えるということが、十分にはされてきませんでした。
 
そのようなことは程度の低い雑多な知識であるとして軽んずる風潮が、あったことを否定できません。それらしい本を紹介し、皆がそれを読んで習得したことにして、説明のないまま先に進んでしまう。
 
また、法学のカリキュラムの最初のほうにある基本科目は、多くの場合、既存の条文が改正されないことを前提として、条文を個別の事例に適用する営みに重点を置いています。そのような営みは社会にとって欠かせない重要なものです。ところがその反面で、制度を変える、条文を書き直す、といったことへの意識は、どうしても低めとなりがちです。
 
自分で条文を書くプロは、国会の事務局にいるほか、国や地方の行政部門にたくさんいます。国では、成立する法律の多数が内閣提出法律案です。地方公共団体には、国で作られた条文にも照らし合わせながらそれぞれの団体で使う条例や規則の条文を作り整備する人たちが多くいます。
 
しかし、法学教育の側では、既存の条文を個別の事例に適用する営みが関心の中心となっていて、自分で条文を書くプロとの間に距離を作ってしまっています。
 
また、自分で条文を書くプロが書く解説書は、現場で必要とされる高度な手法に重点があることが多く、これから学ぼうとする人に必要な基本的知識に重点を置いて説明した書籍は、必ずしも多く書かれていないように見受けられます。
 
本書は、日本における法学教育 (法の教えられ方) の構造に関する以上のような問題意識のもと、目次に示すような組立てで、条文と判決を読めるようになることを目指した書籍です。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 白石 忠志 / 2026)

本の目次

はじめに

第1章 法的な現象はどこにでもある
1 大谷翔平選手の東京ドームでの打球はホームランか
三つの法的問題/シンプルな法的三段論法の例/大谷選手の打球については法的三段論法が3回出てくる
2 本書の方針
国の法を主に念頭に置く/まず条文から

第2章 法令の条文を読む
1  条文を読めると視界が晴れる
条文はなぜ重要か/条文を読めると制度の概要を把握できる/チケット不正転売禁止法に違反するとどうなるか/どのような場合にチケット不正転売禁止法に違反したことになるか/「特定興行入場券の不正転売」の定義を読む/チケット不正転売禁止法のまとめ
2 条文の基本的な部品
条文の原文は縦書き/条・項・号/イロハ/項番号は「2」から振られる/枝番号/「第」を書くか省略するか/「前条」「前項」「前号」・「次条」「次項」「次号」・「同条」「同項」「同号」/「ただし書」と「本文」/「前段」と「後段」
3 条文の基本的な用語
「その他」と「その他の」/「又は」と「若しくは」/「及び」と「並びに」/複数の読み方があり得る場合―例1:「興行」の定義/複数の読み方があり得る場合―例2:住居侵入等の罪

第3章 法令の条文を読みこなす 
1 法令はどのようにして作られるか
条文は変わる/「閣法」/制定・改正の前の段階/制定・改正の案/制定・改正の後の作業/緊急銃猟制度:改正の前の検討/緊急銃猟制度:改正の案/緊急銃猟制度:改正の後の作業
2 古い条文と新しい条文
現代の条文は現代日本語で書かれている/古い用語・言い回し/古い送り仮名/古い漢字使用/実態に合わない古い言語化/言語の論理体系の変化(?)/基本法令はいつ書かれたか/新しい条文から慣れたほうがよいのではないか
3 法令の条文をめぐるいくつかの現象
法令による下位法令への委任/一般法と特別法/一般法と同じなら言及されない/概念の相対性

第4章 裁判所の判決を読む
1 条文を個別の事例に適用する
一般的なルールを具体的な場面に生かす/行政機関も個別の事例での判断を行う/原文は横書き
2 法的三段論法
三段論法/法的三段論法/認知症罹患者列車事故(JR東海)の最高裁判決の構造を読み取る
3 最高裁判決は一般的な規範を示すものか
そもそも「判例」とは何か/藤田宙靖「最高裁判例とは何か」
4 様々な最高裁判決を読む
コンテナ倉庫の最高裁決定/那須塩原別荘地の最高裁判決/敦賀市区域内最終処分場の最高裁判決/裁判所ウェブサイトの「判示事項」/上告受理の申立て
5 下級審判決を読む
地裁判決を1件だけ選んで読む/判決の背景/判決を見付ける/判決の組立てをつかむ/判決が示した「規範」を読み解く
6 立証責任
立証責任とは/「どちらともいえない」がある世界/「推定する」と「みなす」

第5章 リーガルリサーチ
1 リーガルリサーチの入口で
ツールを漫遊してみる/わかったことを書いてみる/当たりを付ける
2 法令をリサーチする
紙の六法は必要か/e―Gov 法令検索/法律の改正の構造/法律の改正をめぐるリサーチの方法/名古屋大学の「法令データベース」
3 行政文書をリサーチする
4 判決をリサーチする
裁判所ウェブサイトの「裁判例検索」/有料の判例データベース/事件番号の重要性/民集・刑集と調査官解説/民事裁判情報の提供方法の変革

おわりに

参考文献
索引
 

関連情報

試し読み:
条文・判決を読む、調べる、考えるための基本が詰まった一冊――『法律の読み方がわかる本』試し読み (『webちくま』 2026年5月29日)
https://www.webchikuma.com/n/ndae73d36eb12
 
著者インタビュー:
東大教授が指摘する、ネット時代にこそ知るべき“法律の構造”「議論をする前にルールを確認するのが出発点」 (『Real Sound』 2026年7月12日)
https://realsound.jp/book/2026/07/post-2456921.html
 
書評:
【今週の労務書】「「前二項」が指すのは?」 (『労働新聞社』第3554号p.16 2026年7月27日)
https://www.rodo.co.jp/column/222542/
 
松尾剛行 評「法学部生・実務家にオススメの一冊」 (『webちくま』 2026年7月10日)
https://www.webchikuma.com/n/nb918c0e14a62
 
入山章栄 評「条文 初歩・根本から整理」 (『日本経済新聞』夕刊 2026年7月9日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD061G80W6A700C2000000/
 
メディア出演:
【法律相談でAIの回答が正確かをどう判断するか】「若しくは」のルール上はどちらも正解/鍵は「人の看守する」がどこまでかかっているか/“原典”にあたるが重要/東京大学・白石忠志【ACADEMIA】 TBS CROSSING DIG with Bloomsberg | YouTube 2026年9月10日)
https://www.youtube.com/watch?v=g6hSdsa1cbs
 
【判例で避けるビジネスの罠:同業他社の先輩に聞いた内部情報を自社の上司にメールすると「カルテル」のリスクに】東京大学・白石忠志/将棋中継でYouTuberが敗訴した事例も【ACADEMIA】 (TBS CROSSING DIG with Bloomsberg | YouTube 2026年9月9日)
https://www.youtube.com/watch?v=nykDCgIT7y8
 
【困った時に役立つ法律の条文の読み方:「不正転売」かどうかは3つの前提を満たすかで確認】条文に出てくる「又は」と「若しくは」は、かっこで括ればわかりやすくなる/東京大学・白石忠志【ACADEMIA】 (TBS CROSSING DIG with Bloomsberg | YouTube 2026年9月8日)
https://www.youtube.com/watch?v=yXb92mKTsfg
 
【転勤・異動辞令に納得のいかないときは、規則を基に3段階で判断】東京大学・白石忠志/ルールを読む力は、社会を変える力になる/複雑に絡み合う法律は「紙の六法」で読み解く【ACADEMIA】 (TBS CROSSING DIG with Bloomsberg | YouTube 2026年9月6日)
https://www.youtube.com/watch?v=A2GyGwlgZFk
 

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