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あなたは、職場でいきいきと働けていますか?

掲載日:2019年7月22日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 015

仕事量が多かったり、過度の集中力が求められる仕事だったり、肉体を酷使する仕事だったり、職場の人間関係が良好でなかったり……。
そこが「いきいきと働ける職場」かどうかは、さまざまな要因で決まってきます。

今これを読んでいる方に質問します。あなたは最近、自分の職場でいきいきと働けていますか? 

はい! と即答できなかった方には、川上憲人教授らが考案した「新職業性ストレス簡易調査票」で、自分の職場を一度チェックしてみるよう、お勧めします。

川上先生が「労働者とストレスの関係」を研究し始めたのは1980年代前半のこと。大手企業の産業医を務めていて、うつや適応障害の人を3年で400人以上診察したのがきっかけでした。以来35年以上にわたってストレスに苦しむ労働者に寄り添い、2012年には、うつ病予防のための、マンガによるインターネット認知行動療法プログラムを開発。ある企業で試験的に導入したところ、1年間でうつ病発症率が5分の1に低下しました。

最新の研究テーマは、「生産的で活気ある職場をどうつくっていくか」。ポイントは「労働者個人」ではなく「職場組織」に着目したこと。なぜなら、近年見られる労働者の心の不調は、労働者個人の問題というより、明らかに職場環境の影響のほうが大きいから。

川上先生によれば、日本の職場は2005年ごろから急激にコミュニケーションが減りました。米国流の成果主義が導入され、労働者同士助け合う日本の企業風土が急速に失われたからです。企業は、同僚を助けても評価してくれません。労働者は単独で成果を上げなければならず、いわば“タコツボ”にこもって働くようになり、各個人が分断されてしまいました。日本の労働者はどうやら孤立状態で働くことに向いてないようです。

幸い、現在では多くの企業がこの問題に気づき、川上先生らの主催するポジティブメンタルヘルスのフォーラムや公開講座に参加するようになりました。コミュニケーションのない職場は労働者の心の健康を害するだけでなく、労働生産性そのものを低下させることがわかってきたからです。「これから労働力人口が急激に減少していくわが国で、経済が持続可能な発展を続けるためには、労働者一人ひとりをいかに大切にするかが重要になります」と、川上先生は力説しています。

このプロジェクトが貢献するSDGs

働きがいも経済成長もすべての人に健康と福祉を

川上憲人 教授 | 医学系研究科

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