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ITの力を利用した21世紀型の持続可能な農業

掲載日:2019年8月26日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 023

イネの生育指標として重要な開花を画像解析技術で自動認識するシステムを開発している。色が塗られた部分で開花を認識している。

「緑の革命」などと呼ばれた20世紀の農業は、世界の多くの人々を飢餓から救いましたが、「一方で大きな課題も残しました」と二宮正士特任教授は警鐘を鳴らします。「なぜなら化学肥料や農薬を大量に投入することが前提の20世紀の農業は、環境負荷を増大させ、水資源を枯渇し、生物多様性や食の安全に負の影響を与えているからです。21世紀は化学物質やエネルギー資源に依存せず、気候変動にも頑健な持続可能な農業を目指していかねばなりません」と二宮先生は語ります。そうした農業を実現するために大きな力となると期待されるのは、近年、目覚ましく進歩しているIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)といったITの力です。

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作物の生育状況のモニタリングに耕地にカメラを固定し、イネの画像を入手する案も検討されたが、現在はドローンを用いる方法が採用されている。

例えば現在、二宮先生がインドの研究チームと共同で進めているプロジェクトでは、イネの品種改良にAIの技術を使っています。「近年、不安定になっている水供給を考慮して、少ない水でも育ち、一定の収量を確保できるイネを育種するのが目的ですが、最低でも10年はかかる従来の方法では、気候変動に迅速に対応できません。そこで、AIにイネを選別させ、育種効率を高めるのです」とインドで展開中のプロジェクトについて説明する二宮先生。

また、AIによる画像認識技術は、イネの開花日や開花時間を人間以上のレベルで識別する能力があるといいます。栽培期間中にカメラを搭載したドローンを水田の上空に飛ばし、イネ開花を報せてくれる自動システムを導入すれば、これまで目視で行っていた作業の手間を大幅に省力化することができます。「今後は、イネと雑草を見分け、除草のタイミングや場所を報せる自動システムをつくることも可能です」と二宮先生は期待しています。

日本とは事情が違い、急速な人口増加や経済発展による食糧需要の増大に直面しているインドにおいて、ITの力を利用した持続可能な農業の芽が花を咲かせようとしています。

このプロジェクトが貢献するSDGs

飢餓をゼロにつくる責任つかう責任貧困をなくそう安全な水とトイレをみんなに気候変動に具体的な対策を陸の豊かさを守ろうパートナーシップで目標を達成しよう

二宮正士 特任教授 | 農学生命科学研究科

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