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ピンチをチャンスに変える福島の農業再生

掲載日:2019年8月28日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 024

東京・田無市にある農場では、福島で課題となった作物を持ち帰り、試験研究を行った上で現地での実証実験や追加調査につなげられた。

東日本大震災および東京電力の原発事故は、福島県の農林水産業に大きなダメージを及ぼしました。大学院農学生命科学研究科の教員らは事故発生の10日目ごろから手弁当で被災地に駆けつけ、水田、畑地、牧場、森林などの放射能汚染を測定し、安全な作物を生産する方法を模索してきました。福島県の農業再生プロジェクトに参加する教員は、2011年4月の時点で50人を超えたといいます。

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弥生キャンパス内にあるアイソトープ農学教育研究施設では、実験室内でコナラという樹木の放射線セシウムの吸収実験が行われている。

「初めのころは、汚染状況のデータが充分集まっておらず、浮き足だった雰囲気でした。やがて、地表に降下した放射線セシウムのほとんどが表面5cm以内にとどまっていること、福島の土壌が放射線セシウムを強く吸着する性質があることなどがわかり、現地農家や行政との連絡を密にして最新の情報を共有してきました」と語るのは、同研究科の二瓶直登特任准教授。それまで福島県農業総合センターで放射線同位体を用いた植物研究を行っていた二瓶先生は、震災をきっかけに所属を東京大学に移し、農作物による放射性セシウムの吸収を減らす研究を行うことで福島の農業再生のために尽力しています。

得られた研究成果を定期的に一般公開する研究報告会は、2011年から数えて計14回行われてきました。山菜など森林で採れた一部の作物を除き、稲や大豆、野菜などすべての作物の放射線セシウム含有量が基準値のキログラム当たり100ベクレル以下になっているとの報告がここ数年続いていますが、「この取り組みは今後も長く続けていくべき」と二瓶先生は言います。「福島の放射能の影響を調べるにあたり、1986年のチェルノブイリ原発事故のデータが役だったように、この地で起こったことを長きに渡って記録し、新たな技術に結びつけていくことには大きな意義があります。ピンチをチャンスに転換させることは、決して不可能ではありません」と二瓶先生は決意を語ります。

このプロジェクトが貢献するSDGs

つくる責任つかう責任飢餓をゼロにすべての人に健康と福祉を

堤 伸浩 研究科長、田野井慶太朗 教授、二瓶直登 特任准教授 | 農学生命科学研究科

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