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生物多様性を守り、活用して災害にそなえる

掲載日:2019年9月16日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 029

福井県・三方五湖の豊かな自然。2005年からラムサール条約指定湿地に登録されている。

生物多様性が私たちに提供してくれる自然の恵みを「生態系サービス」と呼び、人と自然のよりよい関係を築こうとする意識が高まっています。総合文化研究科の吉田丈人准教授が研究している「生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)」は、まさにそうした考えの延長上に生まれたもの。「Eco-DRRの研究が注目されることになったきっかけは、2004年に発生したインド洋大津波のとき、多くの生物の住処にもなっていたマングローブの森が津波の勢いを吸収し、被害が軽減したことでした」と吉田先生は説明します。現在、福井県の三方五湖、滋賀県の琵琶湖周辺地域、千葉県の印旛沼流域を拠点にして、地域住民や行政機関などと連携した研究が進められています。

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(左) 三方五湖で採れたフナ。ほかにもコイ、ウナギ、エビ、ワカサギ、シラウオなど、多様な魚類や水生生物が生息している。
(右) 休耕田を利用して魚の産卵場所や生育場所を増やす取り組みも、地域で進んでいる。湿地の環境が復元された水田では、魚の稚魚が育つだけでなく、絶滅危惧種の水草が繁茂するなど、豊かな生物多様性が戻ってきている。

「例えば三方五湖は、大雨などで過去に何度も氾濫していますが、浸水する場所のほとんどが水田で、人の住む家はほとんど建てられていないんです。浸水した水田には、浅瀬に卵を産む習性のあるフナがやってきて、稚魚が豊富な餌をとって育ちます。こうした育ったフナを刺身や煮付けにして食べる独特な食文化が地域に根づいています」と語る吉田先生は、人と自然が昔から共存してきたことを指摘します。吉田先生ら研究グループはインターネット上に「みんなの三方五湖マップ」を開設して、こうした昔の人たちの知恵や文化を伝えるとともに、災害リスクのある場所の分布や、その土地ならではの自然の恵みなどについての情報も公開しています。「自分たちが住む地域の自然を、どのような姿にしていくのが理想なのか? そのためには何をすればよいのか? そうしたことを考えるきっかけとなる情報を提供し、自然とともに歩む手助けをしていきたいです」と語る吉田先生。地域の特色を生かし、人と自然が良好な関係を築く方法を模索しています。

このプロジェクトが貢献するSDGs

気候変動に具体的な対策を陸の豊かさを守ろう住み続けられるまちづくりを

吉田丈人 准教授 | 総合文化研究科

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