女性差別を起点に、声を上げられない人たちについて考える
このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。
FSIプロジェクト 040
メディアの社会的役割が「権力の監視」にあることは、論を俟たないでしょう。現にこれまで、テレビや新聞をはじめ、メディアはさまざまな政治の腐敗や社会の不公正を世間に公表し、権力の濫用や暴走を防いできました。ところが情報学環・学際情報学府の林香里教授は、「同じ権力であっても、『男性権力』の監視については、昔も今も不充分な状況にあり、女性たちの考えや声も十分に伝えられているとは言えません」と指摘します。
その大きな原因は、メディア産業に従事する人たちの中で女性の比率が低いため、女性の視点を欠いた報道が主流となってきたところにあります。産学共同研究グループ「メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会(MeDi)」は、このような現状をいかに改善していくべきかを考える場として2017年に発足。これまで5回のシンポジウムが行われたほか、参加メンバーたちによる著書『足をどかしてくれませんか。──メディアは女たちの声を届けているか』(亜紀書房)も出版されました。
2017年は、米国ハリウッドを発信地として、男性から暴力を受けたり、ハラスメントをされたりした経験を持つ女性たちが自らの体験を告白する「♯MeToo」運動が起こった年ですが、勇気を出して告白/告発した女性が、逆に世間からのバッシングにさらされるという状況です。むしろ、ネットメディアの拡大で女性に対する差別や偏見は助長されている傾向もあると林先生は指摘します。
「もちろん、社会から抑圧されているのは女性たちだけでなく、セクシャル・マイノリティの人たちや難民の人たち、貧困にあえぐ人たちなど、さまざまな人たちがいます。女性差別を改善する方法は、女性以外の、社会に対して自らの苦境を訴えられずにいるマイノリティの人たちをも救う手段となり、助けにもなることでしょう」
このプロジェクトが貢献するSDGs
林 香里 教授 │ 情報学環・学際情報学府
関連リンク
- 未来社会協創推進本部 (UTokyo FSI)
- メディア表現におけるダイバーシティ向上を目指す産学共同抜本的検討会議(登録プロジェクトページ)
- 刊行物「FUTURE SOCIETY INITIATIVE」