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淡青色の注目アーティストたち 「ファスナーの船」の鈴木康広 | 広報誌「淡青」38号より

掲載日:2019年5月28日

淡青色の注目アーティストたち

東大と深い関わりを持つ多くの皆さんの中から、注目すべき創作活動を繰り広げているアーティストを4人選び、その横顔を紹介します。

自分の中の他者との対話から見慣れた世界を見知らぬ新世界へ

鈴木康広さん
アーティスト/
先端科学技術研究センター 客員研究員
Yasuhiro Suzuki
http://www.mabataki.com/
画像1
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見えない空気を切り取りながら浮かぶ人の形の透明彫刻「空気の人」(画像1)、航跡が水面を開くように進むファスナー型の船(画像2)、赤い玉をりんごに置き換えて地球の引力がより感じられるけん玉(画像3)、水の波紋で木の年輪を表す切り株型のバケツ(画像4)、青と水色が組み合わさった芯で水平線を描く色鉛筆、「現在」と銘打たれているが押すと「過去」と印字される判子……。

字ではピンと来ずとも目にすれば旧知の世界が未知の新世界に変貌するような作品の数々を、鈴木さんは生み出してきました。けん玉やボーダー柄をこよなく愛する気鋭のアーティストは、どうして東大の研究所にいるのでしょう。

画像2
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「東京造形大学を出てフリーターだった頃、NHKのアート公募番組に応募した映像作品「遊具の透視法」(画像5)が年間最優秀作に選ばれました。番組のキュレーターだった岩井俊雄さんが先端研に着任することになり、声をかけていただき特任助手になったんです」

後にはVR研究の第一人者・廣瀬通孝先生の研究室で特任助教となり、デジタルパブリックアートのプロジェクトに参画。2009年には羽田空港に巨大な「空気の人」を浮かべ、人々を驚かせました。現在は、武蔵野美術大学の准教授として学生を指導する一方、中邑賢龍先生の異才発掘プロジェクト「ROCKET」に関わりながら創作を続けています。中には先端研の環境に刺激された作品もあるとか。

「1号館の古い風洞施設で樹木の種子の動きを見る実験を見学した際、その美しさに目を見張りました。具体的成果は出ていないようでしたが、自然の美に目覚めるような体験が大きなヒントになったんです」

画像3
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撮影:川内倫子
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撮影:市川勝弘 画像提供:スパイラル/(株)ワコールアートセンター

開いた目と閉じた目を表裏に印刷した紙が装置から吹き出され、空中でまばたきをするように回って落ちてくる「まばたきの葉」(画像6)は、幾多の展覧会に出展される代表作の一つとなり、「まばたき」はその後もアーティストとしての重要なモチーフとなりました。

はや18年を数えるアーティスト人生。アイデアの枯渇を心配した質問に、鈴木さんは戸惑いの表情を浮かべます。そのわけは、アトリエの机に並ぶ無数のノートにありました。

「昔から思いついたことをスケッチして手元に置いています。余白を大きく取り、後で見て生じたアイデアを付け足す。昔書いたものがマッサージされて出てくる感じです。日付も題名も書かないので検索性はゼロ。その都度たまたま手に取ったページがヒントをくれるので、困ることはありません。むしろやることが多すぎて大変(笑)」

小さい頃から自分の中に他者がいる感じを抱え、周囲にあるモノとよく話していたという鈴木さん。ノートの中にいる過去の自分とも頻繁に対話しながら、世界の見方を更新し続けます。

鈴木作品はパブリックな場で披露されることもしばしば。2018年5月、巨大な「空気の人」は六本木の東京ミッドタウン芝生広場で大勢の人々と寝転びました。「ファスナーの船」は2018年12月に隅田川の水面を切り開いています。次に開かれるのはあなたの街かも?

アトリエ写真
数々の作品や作品以前のもの、そして大量のツバメノートが居並ぶ先端研14号館のアトリエ。
写真/貝塚純一

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