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ベージュの表紙の真ん中に書名

書籍名

Réceptions de la culture japonaise en France depuis 1945: Paris-Tokyo-Paris: detour par le Japon

著者名

Fabien Arribert-Narce, KUWADA Kohei, Lucy O’Meara

判型など

348ページ、ペーパーバッグ

言語

フランス語

発行年月日

2016年4月28日

ISBN コード

978-2-745-33039-0

出版社

Honoré Champion

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

Réceptions de la culture japonaise en France depuis 1945:

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本書は2013年9月6日と7日に東京の日仏会館で開催された国際シンポジウム「パリ - 東京 - パリ: 1945年以降のフランスにおける日本文化の受容」の研究発表をまとめたフランス語の論文集です。シンポジウムには3名のフランス人現代作家が参加して基調講演や対談を行い、フランス、アメリカ、イギリス、日本から研究者が参加しました。シンポジウムの目的は第二次世界大戦後から現在にいたるまで日本文化 (文学、演劇、美術、映画、ダンス、写真など) がどのようにフランスにおいて受容されているのかを多角的に検討することです。企画者はファビアン・アリベール=ナルス (当時、青山学院大学、現在、エジンバラ大学)、桑田光平 (東京大学)、そして、ルーシー・オメアラ (ケント大学) でした。
 
19世紀半ばの万国博覧会が開催されて以降とりわけ盛んになるヨーロッパでの日本文化受容に関しては、これまでも多くの研究がなされてきました。たとえば美術におけるジャポニズム (日本趣味) と呼ばれる、西洋絵画における浮世絵などの影響を精査する研究や、あるいはまた、作品内に日本文化や日本人を取りいれた文学作品の読解を通して西欧における「日本」のイメージを批判的に分析する研究などがそうです。しかし、そうした従来の研究ではカバーしきれないほど多様な広がりをみせる現在のヨーロッパ (とくにフランス) における日本文化受容のあり方を、現時点でさしあたり確認してみることが、このシンポジウム(とその成果としての本書)の狙いです。現在では、漫画や写真やファッションといった、いわゆる「サブカルチャー」と呼ばれるものを抜きにして、日本文化やその海外への影響を考えることはできません。また、かつての伝統的な「日本」のイメージ (庭園、寺院、禅など) も、メディア環境や観光の発展によって、大きく受容のされ方が変わってきています。そこには「他者」をエキゾチックな眼差しで捉えようとする視線がなんらかのかたちで相変わらず働いているのですが、本書に収められた論文はいずれも、そうしたエキゾチックな視点を批判的に検討しつつ、いかに他文化の受容が多様で豊かであるかを示してくれています。フランスという他者の眼差しを通して見られた日本がどのようなものなのかを知ることは、「迂回」を通じて日本を「再発見」することでもあるでしょう。
 
しかし、本書が「日本的なもの」とは何かを明らかにしようとするものではないことは明らかです。そうした姿勢とは反対に、具体的な作品分析を通して、日本文化の他者による受容を考察することで、本書は「日本的なもの」がいかに「虚構」でしかないかということを明らかにしてくれています。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 桑田 光平 / 2016)

本の目次

謝辞

はじめに (ファビアン・アリベール = ナルス、桑田光平、ルーシー・オメアラ)

序論: ミカエル・フェリエ「日本文化受容における珊瑚の作家たち、あるいは新しい樹木性の作家たち」

第1部: 日本に対する誤解と日本のステレオタイプ化されたイメージ
 第1章: エマニュエル・ロズラン「1970年前後のフランス知識人の著作における日本的「主題 = 主体」の希薄化」
 第2章: 林修「マルグリット・ユルスナールにおける能の受容」
 第3章: マルク・コベール「克服された <お菊さん> コンプレックス? - ヤマタ・キクとクリスティーヌ・モンタルベッティを通して見た日・仏の女性小説」
 
第2部:日本人作家との文学的共鳴: ジョルジュ・ペレック、パスカル・キニャール、ミカエル、フェリエ、フィリップ・フォレスト
 第4章: アーシュラ・ティド「《まずは目を》- ジョルジュ・ペレックにおける「わび・さび」と「並以下のもの」」
 第5章: アンドレ・レドリ「随筆はフランス的ジャンルか?」
 第6章: カトリーヌ・マイヨ「フィリップ・フォレスト、もうひとつの日本との共鳴」
 第7章: フィリップ・フォレスト「漱石への回帰 -『文学論』と私の書棚のその他の日本文学」

第3部: 都市における遊歩者、写真家、詩人: パリ、東京、京都
 第8章: アカネ・カワカミ「ジェラール・マセと堀江敏幸、コスモポリタンの遊歩者 - パリと東京のあいだで書くこと / 旅すること」
 第9章: ファビアン・アリベール = ナルス、桑田光平、ルーシー・オメアラ「日本への迂回(ジェラール・マセとの対談)」
 第10章: ブルーノ・シボナ「京都の寺院・庭における異場所的な書くことの儀礼」
 第11章: アニエス・ディソン「ジャック・ルーボーの『極私的東京案内』- 感情転移と移動」
 第12章: エリザベス・カルドンヌ = アルリック「ジャポニズムの挑戦 - ジャン = フィリップ・トゥーサン」
 
第4部: 日本に対する誤解と日本のステレオタイプ化されたイメージ
 第13章: 千葉文夫「クリス・マルケルの日本」
 第14章: ティフェーヌ・ラロック「日本を知るあるいは垣間見る、旅の親しみあるいは戸惑い——ドミニク・ゴンザレス=フォルステルとロベール・カーンのオーディオ・ヴィジュアル作品」
 第15章: アンヌ = ガエル・サリオ「<取り違え> の美しさ、あるいはフランスのダンスにおける日本への迂回 - シディ = ラルビ・シェルカウイ『テヅカ』(2011) の変遷と研究」

参考文献
著者紹介
人名索引
図版一覧
目次

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