東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白いシンプルな表紙に緑のアウトライン

書籍名

The Contradictions of Capital in the Twenty-First Century The Piketty Opportunity

著者名

Pat Hudson、Keith Tribe (編)

判型など

312ページ、234x156mm

言語

英語

発行年月日

2016年10月

ISBN コード

9781911116110 (ハードカバー)

出版社

Agenda Publishing

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

The Contradictions of Capital in the Twenty-First Century

英語版ページ指定

英語ページを見る

1980年代以降、世界、特にアメリカを初めとする先進諸国で所得分配の不平等化が進展している。トマ・ピケティの『21世紀の資本』(山形浩生・守岡 桜・森本正史訳、みすず書房、2014年) が、研究者の枠を超えて、日本を含めて世界的な大ベストセラーとなったのは、次のような同書の魅力的な内容に加えて、こうした現実を背景としている。『21世紀の資本』は2つの大きな特徴を持っている。
 
第一に、同書が、ピケティ自身と共同研究者たちの努力によって構築された100年以上、場合によっては200年以上の長期にわたる各国の不平等度のデータに基づいていることである。これによって、20世紀の初頭まで高所得者への所得集中度は各国で非常に高かったこと、それが第1次世界大戦後から低下し1970年代前後まで低い水準にとどまったこと、そして1980年代から再び集中度が上昇し、国によっては20世紀初頭に近い水準に達していること等の事実が示された。そして第二に、同書はこうした各国の所得平等度の長期的な動きを、ごく単純なメカニズムによって説明している。すなわち歴史的に見てr (資本収益率) はg (GDP成長率) を常に上回っており、このことがGDPの中で資本から得られる収益が占める比率 (資本分配率) に、長期的な上昇趨勢をもたらすというのである。
 
ピケティの議論の単純さは、一方で多くの読者を惹き付け、税制等による所得不平等の是正の必要性という明快な政策提言を導くことに寄与したが、他方で現実に作用しているさまざまなメカニズムを視野の外に置くという問題点を生んだ。本書The Contradictions of Capital in the Twenty-First Century: The Piketty Opportunityは、ピケティの著作から触発されつつ、あらためて各国・地域の所得分配の長期動態を見直し、また所得分配に関する経済理論の再検討を行ったものである。フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、イギリス、アフリカ、日本、インドが対象国・地域として取り上げられている。
 
日本については、第2次世界大戦前期の所得不平等度の上昇が、ピケティが想定したメカニズムではなく、農業セクターから非農業セクターへの低賃金での労働力移動という、後発国に固有のメカニズムによって生じたことが文献にもとづいて指摘される一方、個人別データに基づいて一部に多額の資産を蓄積し高所得を得る大資産家が形成されていたことが示されている。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 岡崎 哲二 / 2017)

本の目次

1. Pat Hudson and Keith Treibe,“Introduction”
2. G.C. Harcourt and Keith Tribe, “Capital and Wealth”
3. Keith Tribe, “Inequality”
4. Avner Offer, “Models, Money and Housing”
5. Gauthier Lanot, “French Idiosyncracies”
6. Jan-Otmar Hesse, “Fact or Fiction ?: Complexity of Economic Inequality in the Twentieth-Century Germany”
7. Yiva Hasselberg and Henry Ohlsson, “Collective Wealth Formation: Conflict and Compromise in Sweden”
8. Mary O’Sullivan, “A Confusion of Capital in the United States”
9. Jim Tomilinson, “Distributional Politics: The Search for Equality in Britain”
10. Luis Bertola, “Looking at Piketty from the Periphery”
11. Patrick Manning and Matt Drwensky, “The Difference of Inequality in Africa”
12. Tetsuji Okazaki, “Income Distribution in Pre-war Japan”
13. Prasannan Parthasarathi, “Piketty and India”
14. Pat Hudson, “Goals and Measures of Development: The Piketty Opportunity”
15. Ravi Kanbur and Joseph E. Stiglitz, “Wealth and Income Distribution: New Theories Needed for a New Era”