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クリームイエローの表紙に人々が集うイラスト

書籍名

コミュニティデザイン学 その仕組みづくりから考える

著者名

小泉 秀樹

判型など

268ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年9月30日

ISBN コード

978-4-13-061133-6

出版社

東京大学出版会

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コミュニティデザイン学

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少子高齢化の進展は、コミュニティデザインに、多くの新しい課題を突きつけている。地域包括ケアシステムの構築、子育て支援や教育関連のサービスのきめ細やかな展開、それらを提供する担い手としての市民社会組織の育成と連携、そして担い手の活動拠点となる各種施設の空間的配置の再考、関連した交通体系やサービス網の見直し、これら一連の事項を決めるための地域における意思決定の仕組みの構築、などである。
 
さらに、高齢化や少子化は、社会保障費の増額をもたらし、国や自治体の財政的な制約も増大しつつある。こうした中、高齢者の活動や子育ての主な舞台としての「地域公共圏」=地域の社会・市場・環境・政治、が果たす役割は、今度さらに増してくるだろう。
 
本書はこうした問題意識をもとに、現代社会に求められるコミュニティデザインとは、1) 社会的関係としてのコミュニティのデザイン、2) そのために必要となる場のデザイン、3) そしてそれらを支える社会的仕組みのデザイン、から構成されるものであり、またこれらの総体をコミュニティデザインの技術手法制度的な対象とすべきと理論的に整理した。
 
その上で、特に、3) の社会的仕組みのデザインに焦点を当て、現代日本におけるコミュニティデザインの先端的試みを網羅的に把握・整理し、到達点と課題を示している。具体的には以下の通りである。
 
第I部では、住民によるコミュニティのデザインを主なテーマとした。まず第1章では、総合的支援を行う装置としての「まちづくりセンター」をとりあげ、その可能性と課題をエンパワーメントの関連から論じた。第2章では、住民によるコミュニティのデザイン、まちづくりに対する経済的支援の仕組みの構築について、住民・市民の提案を事業化する「市民ファンド」を取り上げて到達点を論じた。第3章では、「まちづくり条例」を取り上げ、特に住民・市民の提案を受け止める提案権の導入と計画形成支援の構築の観点から課題を論じた。
 
ついで、第II部では、協働によるコミュニティのデザインを進める制度・仕組みをとりあげた。第4章では、地域住民自治型まちづくり制度をつうじた住民自治の促進と再構築の可能性について論じた。第5章では、協働のまちづくり事業制度をとりあげ、NPOと行政/企業との連携の課題を論じた。第6章では、民有空間を活用した「住環境」の再編を進める制度について、「新しい公共」の空間化という切り口で論じた。さらに、第7章では、公共施設再配置やリノベーションを通じた地域再生を検討し、コミュニティマネジメントに展開する方策を構想した。
 
第III部では、そうした個々の社会的仕組みを総合することや、相互に繋げる社会的仕組みを取り上げた。第8章では、現状の「都市マスタープラン」の課題を示しつつ、協働フレームワークとしての空間戦略への展開を論じた。第9章では、コミュニケーション・ツールとしてのICTについて論じた。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 小泉 秀樹 / 2019)

本の目次

はじめに
序章  コミュニティデザインの歴史的展開と本書のねらい
 
第I部  住民によるまちづくり
第1章  総合的支援の構築――多様な資源の供給源としての総合的支援機能を持つ「まちづくりセンター」
第2章  経済的支援の構築――住民・市民の資金と思いをつなげる「市民ファンド」
第3章  提案権の導入と計画形成支援の構築――住民・市民の提案を受け止める「まちづくり条例」
 
第II部  まちづくりへの協働事業
第4章  住民自治の促進と再構築――地域住民自治型まちづくり制度
第5章  住民・NPOと行政の連携――協働のまちづくり事業制度
第6章  住民主体による私有空間を活かしたまちづくり――地域共生のいえづくり支援事業制度を中心に
第7章  社会資本のリノベーションによる地域活性化――少子高齢化における新しいコミュニティマネジメントに向けて
 
第III部  協働を超えて
第8章  協働フレームワークとしてのコミュニティ戦略――「都市マスタープラン」からの展開
第9章  情報・ICTをまちづくり支援に活かす
 

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