東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

ライトブラウンの表紙

書籍名

都市計画学 変化に対応するプランニング

著者名

中島 直人、 村山 顕人、高見 淳史、樋野 公宏、寺田 徹、廣井 悠、瀬田 史彦

判型など

208ページ、B5変

言語

日本語

発行年月日

2018年9月25日

ISBN コード

978-4-7615-2689-4

出版社

学芸出版社

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書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

都市計画学

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本書は、主に東京大学都市工学科で教鞭をとる教員の分担執筆による都市計画学の教科書である。まえがきにもあるように、1970年代以降生まれの都市計画専門家が試行錯誤しながら学生に教えている内容がそのまま、本書にまとめられている。これまでも都市計画の教科書は数多く出版されている。本書も類書と同様に、土地利用、都市交通、住環境、都市デザイン、都市緑地、都市防災、広域計画といった分野ごとに都市計画を論じるというオーソドックスな構成をとっている。しかし、類書との違いも明確である。第一に、序章で示したとおり、これまでの日本の都市の歩みを、1919年の都市計画法制定以来の都市の近代化という目標のもとでの行政主導の道路・公園などのインフラ整備を進めていった「つくる都市」、旺盛な民間建設活動をコントロールしつつ、それに対応する受け皿としてインフラを整備していく高度経済成長期以降の「できる都市」と整理したうえで、人口減少・超少子高齢化社会である現代を、多様な主体の連携のもとにマネジメントしていく、持続可能性に価値が置かれる「ともにいとなむ都市」と考えるという歴史認識を共通のフレームワークとして、都市計画の各分野を論述している点にある。つまり、各章では、これまでの各分野での都市計画の技術や学術の発展を、順を追って説明したうえで、現在、そしてこれからの都市計画の方向性を論じている。このフレームワークによって、読者は各分野だけでなく、都市計画学全体の流れを理解することができるようになっている。また、もう一点、類書との違いとして、フィジカルプランナーという立場を重視し、計画策定技法や職能論にそれぞれ章を割いていることが挙げられる。特に、職能論では、都市工学科やまちづくり大学院のカリキュラムにも触れながら都市計画家を育成する教育のあり方を論じたり、都市計画の先人たちの言葉を紹介し、都市計画家が持つべきマインドのありようにも言及するなど、都市計画の専門家、担い手の育成という目標が各著者に共有され、本全体の通奏低音となっている。また、巻末には、各章の執筆担当の著者が各章8冊ずつ、合計72冊の関連書籍を紹介するブックガイドが付されている。本書は都市計画の入門書であるが、このブックガイドにより、読者は関心を持った分野の更なる探究に導かれるだろう。

 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 中島 直人 / 2021)

本の目次

序章 時代認識 ――都市計画はどこから来て、どこに向かっているのか(中島直人)
1章 土地利用と施設配置 ──都市の構造をつくり、都市の変容をマネジメントする(村山顕人)
2章 都市交通 ──都市の機能と暮らしを支える(髙見淳史)
3章 住環境 ──都市居住の礎を築く(樋野公宏)
4章 都市デザイン ──魅力的な都市空間をつくる(中島直人)
5章 都市緑地 ──都市と自然を接続する(寺田 徹)
6章 都市防災 ──都市災害を軽減し、安全で快適な都市を創造する(廣井 悠)
7章 広域計画 ──拡大・変化する都市圏の一体的な発展のために(瀬田史彦)
8章 計画策定技法 ──都市計画はどのような方法や技術に支えられているのか(村山顕人)
9章 職能論 ──都市計画マインドを育む(中島直人)
10章 ブックガイド ──都市計画を学ぶための72冊

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