東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

赤い表紙に緑の帯

書籍名

迷える英語好きたちへ

著者名

鳥飼 玖美子、 斎藤 兆史

判型など

224ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2020年10月7日

ISBN コード

978-4-7976-8060-7

出版社

集英社インターナショナル

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迷える英語好きたちへ

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本新書は、鳥飼玖美子と斎藤兆史の手になる一般読者向けの共著書であり、英語学習に興味のある日本の読者に対し、英語教育や英語関連の学理や政策を理解する際の基本的な枠組みを提供することを目的としている。もともと集英社インターナショナルの雑誌『kotoba』に連載された対談記事を二つに分け、さらに8編の短い随筆を書き下ろして一冊の本にまとめたものである。それら10編のテキストは、中心的に扱っている内容から見て、大きく4部構成となっている。
 
第一部 (1、2、3章) は、外国語の使用とコミュニケーションに関する議論において広く受け入れられ、また一般的に良いものだと考えられている、いわゆる「四技能 (会話、聴解、読解、作文)」という考え方を取り上げ、それらの四技能は、学習者の総合的な言語能力が具体的な状況に応じて目に見える形で個別に表れたものに過ぎず、個々に固定化された技能と考えるべきではないと論じる。この第一部はまた、文部科学省が、誤った「四技能」仮説に基づいて大学入試共通テストの一部 (とくに会話の試験) を民間の試験団体に外部委託することを検討した経緯を時系列的に概観している。
 
第二部 (4、5、6章) は、とくにコロナ禍において目立った外来語や英語として通じない和製カタカナ英語の急増 (ロックダウン、パンデミック、クラスター、リンク、オーバーシュート、GoToトラベル、ピークアウトなどなど) を、日本語の「生態系」を大いに損なうものとして批判的に検討している。第4章はまた、文部科学省が小学校に英語教育を導入し、教育現場に大きな混乱を生じさせている過程を批判的に論じている。
 
第三部 (7、8章) において、両著者は、それぞれに関わってきたNHKや放送大学によるテレビやラジオの語学番組・授業を回想する。二人はまた、日本における英語番組の改善案を提示し、鳥飼はさらに、今後インターネットがリモート英語学習・教育に重要な役割を果たすであろうと予言する。
 
最後の第四部 (9、10章) は、英語教育・学習における英文学の効用を例示する。近年、英語教材として英語文学が見直されてきており、両著者は、自分たちが英文学を読んできた経験がいかに英語理解や英語使用を豊かなものにしてきたか、そしていかに同じ学習法が一般的に有効であるか、英語文学の読解がいかに日本人の英語学習を上質なものにするかを論じている。

 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 斎藤 兆史 / 2021)

本の目次

まえがき(鳥飼玖美子)
第1章 対談1:英語民間試験導入狂騒曲
第2章 「四技能」という「錦の御旗」(鳥飼玖美子)
第3章 四技能信仰の問題点(斎藤兆史)
第4章 対談2:日本人の英語の現在、過去、そして未来
第5章 カタカナ語を活用した英語学習(鳥飼玖美子)
第6章 日本語を脅かすカタカナ英語(斎藤兆史)
第7章 メディアの英語講座(鳥飼玖美子)
第8章 実用と教養のはざまで――私が関わった英語番組(斎藤兆史)
第9章 文学を用いた英語学習法(斎藤兆史)
第10章 英語で文学作品を楽しむ(鳥飼玖美子)
あとがき(斎藤兆史)

関連情報

ラジオ出演:
Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM (Tokyo FM 2020年10月23日)
https://www.tfm.co.jp/podcasts/museum/detail.php?id=26586

書評:
書評 (『週刊東洋経済』2020年10月31日)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20201026/
 
書籍紹介:
[新刊レビュー] 迷える英語好きたちへ (スポーツ報知 2020年11月24日)
https://hochi.news/articles/20201122-OHT1T50055.html?page=1
 
(新書・文庫)『迷える英語好きたちへ』鳥飼玖美子、斎藤兆史著 (日本経済新聞 2022年10月31日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65664110Q0A031C2MY6000/

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