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白い表紙

書籍名

大日本史料 第九編之二十九

判型など

314ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年6月30日

ISBN コード

978-4-13-090429-2

出版社

東京大学出版会

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大日本史料 第九編之二十九

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『大日本史料』は、東京大学史料編纂所が編纂・発行する日本史史料集の一つである。「六国史」の後を受け、仁和3(887)年から明治維新にいたる約980年間を、16の編に分けて編纂する。明治34 (1901) 年に『第六編之一』及び『第十二編之一』を刊行して以降、第一編から第十二編までに逐次着手し、担当年代を終了した第四編以外は、現在も編纂・発行を続けている。
 
具体的な体裁は、収集した史料 (歴史学研究の素材となるもの) を出来事ごとに整理し、その出来事の概要をあらわす文章 (「綱文」) のもとに関連する史料を原文のまま列挙して一項目とし、これを年月日順に配列する。ただし、日を明らかにできないものは「是月」として月末に、月日を明らかにできないものは「是歳」として年末に収める。また、出来事にまとめ難い史料は、各年の最後に、「年末雑載」として、「神社」「仏寺」「諸家」「学芸・遊戯」「所領」「年貢・諸役」などの項目に分けて掲げる。
 
『第九編』は、細川政元に廃された室町幕府第10代将軍足利義稙 (この時は義尹) が、大内義興等とともに、第11代将軍義澄・細川澄元等を追って京都に入り、将軍に復帰する永正5 (1508) 年から、織田信長が第15代将軍義昭を擁して上洛の動きを見せる永禄11 (1568) 年までの、いわゆる戦国時代を担当する。
 
今回刊行した『第九編之二十九』は、大永4 (1524) 年9月1日から是歳までを収録する。畿内では、政長流畠山氏の稙長と義就流畠山氏の義堯とが河内で争い、筒井氏等大和の国人も参戦した。一方、関東では、相模から武蔵南部へ侵攻した北条氏綱が、関東管領上杉憲房と、次いで、甲斐の武田信虎とも和議を結んだ。朝廷では、後柏原天皇の皇子尊鎮入道親王の勧進によって、鎌倉時代初期の天台座主慈円の三百年忌追善のため、百首和歌が催行された。12月8日条には、曹洞宗の僧侶で甲斐永昌院2世である菊隠瑞潭入寂の項目を立て、伝記史料として、菊隠が僧俗に与えた多くの法語を採録した。同じ宗派の僧侶にとどまらず、他国・他宗の僧侶、武田氏一族や家臣、甲斐八代郡全僧俗に与えたものや、さらに、月ごとの法語の雛形も見られ、曹洞宗の広まりに果たした菊隠の役割の大きさが知られる。是歳条には、「朝鮮王朝実録」から、対馬守護宗盛長による朝鮮王朝への使節派遣に関する記事等をまとめた。

『大日本史料』の編纂・発行には、素材となる史料の網羅的な調査・収集と整理・研究が必須である。史料編纂所では、明治以来、所蔵者・所蔵機関等の御理解と御協力を得て、書写や写真撮影などによる史料の調査・収集を続けている。また、常勤・非常勤の所員による目録・索引の整備等の基礎的作業も、それが自身の刊行に直接結びつくことがなくとも、常に行われている。近年では、データベースを活用し、刊行とは別に、これらの蓄積の公開も進めている。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 准教授 渡邉 正男 / 2021)

本の目次

大日本史料
 第九編之二十九目次
後柏原天皇
 大永四年
  九月
一 日 御祝、
五 日 悲田院順長ニ香衣ヲ聴サル、是日、順長、参内シテ之ヲ謝ス、
六 日 豊後・筑後守護大友義鑑、犬追物ヲ興行ス、
七 日 幕府、賀茂別雷神社ニ、造営料所トシテ、同社祠官森跡所々ヲ寄進ス、
    細川高国、其子稙国ト共ニ、石清水八幡宮ニ詣ス、尋デ、高国、大神宮ニ詣ス、
     神余昌綱ノ参宮
九 日 節供御祝、和歌御会アリ、
    対馬宗盛長、宗盛次ニ、同国立亀津碇公事ヲ充行フ、
十三日 観月和歌御会、
十五日 細川高国、実相院盛胤ヲ興福寺五師ニ補セラレンコトヲ、同寺別当経尋ニ請フ、経尋、許サズ、是日、盛尊ヲ之ニ補ス、
二十日 安楽光院長悦{喜渓、}ヲ召シテ、御受戒アラセラル、
    遠江・駿河守護今川氏親、興津正信ヲシテ、父久信ノ所領ヲ安堵セシム、
廿二日 山城三福寺格翁ヲシテ、曼荼羅ヲ講ゼシメラル、
    薬師寺別当経尋、同寺領播磨土山荘等ノ年貢ノ進納ヲ、同国守護赤松才松丸{晴政、}ニ請フ、
     薬師寺別当経尋、同寺領河内志紀・若江両荘ノ年貢ノ進納ヲ、同国守護代遊佐順盛ニ請フ、
廿五日 青蓮院入道尊鎮親王、慈円ノ三百年忌追善和歌ヲ勧進スルニ依リ、勅題及ビ御製ヲ賜フ、
廿七日 河内畠山義堯、同国日野ニ着陣シ、其部将遊佐堯家、同国仁王山ニ城ク、
    伊賀仁木七郎、近江九里一党等ト共ニ、山城笠置ニ乱入ス、大和狭川某・筒井順興、邀ヘ戦ヒテ、之ヲ破ル、
廿八日 後土御門天皇二十五回聖忌、御法会ヲ山城般舟三昧院ニ修シ、阿弥陀経ヲ書写アラセラル、
廿九日 九月尽和歌御会、
    石清水八幡宮祠官田中清松丸ヲシテ、家督及ビ禁裏御師職ヲ安堵セシメラル、
    日向島津忠朝、其属城大隅串良城ヲ、同国志布志新納忠勝ノ子忠常ニ与フ、是日、肝付兼興、串良城ヲ攻略ス、
(以下略)

関連情報

大日本史料・史料綜覧
https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/dainihonshiryo_shiryosoran
 
自著解説:
所報 - 刊行物紹介 (『東京大学史料編纂所報』第56号 p.42-44)
https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/syoho/56/pub_shiryo-09-29/

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