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書籍名

格差社会のセカンドチャンスを探して 東大社研パネル調査にみる人生挽回の可能性

著者名

石田 浩、 石田 賢示 (編)

判型など

256ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年2月

ISBN コード

978-4-326-60367-1

出版社

勁草書房

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格差社会のセカンドチャンスを探して

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『格差社会のセカンドチャンスを探して』は、日本社会において不利な状況に陥った人びとが、その後いかにして不利から立ち直り、やり直す機会 (セカンドチャンス) を得られるのかを探求したものである。どのような人びとが不利な状況に直面するのか、また不利を経験した人びとがどのような経緯をたどってそこから脱出するのかを、時間的な流れに沿って丁寧に描き出すことを目的としている。そのため、本書は一時点の横断調査ではなく、同じ人びとを長期にわたり追跡する縦断調査を用い、人びとのライフコースにおける変化を跡づけている。具体的には、20年近くにわたり同一個人を追跡した東大社研パネル調査のデータが用いられており、人びとの変化の実像が立体的に捉えられている。
 
人びとは様々な局面で不利な状況に直面しうる。本書は、多様な場面における不利の発生に着目している。第1部では、ライフコース初期における不利を取り上げる。第1章では、出身家庭による不利 (例えば貧困家庭出身) が成人後も影響を及ぼし続けるのかを検証する。第2章では、高等教育機関の夜間部に進学した人びとの特徴と、昼間部出身者との報酬格差を分析する。第3章では、大学・短大・高専・専門学校の中退者に焦点を当て、彼ら・彼女らが直面した不利と、その後の立ち直りを検証する。
 
第2部では、職業キャリアと経済生活に関わる局面に焦点が移る。第4章では、一度失業・無業に陥った後の正規雇用獲得の可能性と、ネットワークの役割に着目する。第5章では自営業者を取り上げ、自営業から常時雇用への移行と、より良い働き方の実現をセカンドチャンスと位置づけて分析する。第6章では貧困の経験を扱い、貧困に陥る人びとの特徴と、そこからの脱出というセカンドチャンスの可能性を探る。
 
第3部「メンタルヘルスからみた立ち直り」では、心の側面に光が当てられる。第7章は子ども期の逆境経験と成人期のメンタルヘルスとの関連を分析し、子ども期の辛い経験がメンタルヘルスに与える悪影響を緩和する要因を探る。第8章では、失業がメンタルヘルスに与える負の影響を取り上げ、それが個人の回復力や周囲からの支えによってどこまで軽減されるのかが検討される。第9章では、親との死別経験とメンタルヘルス悪化との関連を取り上げ、死別の悲しみから回復しやすい人の特徴を検証する。
 
終章では、現代日本における格差のもとでのセカンドチャンスの可能性について考察する。一時点の断面として表れる有利・不利の格差は一見固定的にみえるが、個人のライフコースという時間軸の中に位置づけると、不利からの挽回や脱出の可能性が十分に存在することが示される。すなわち、本書は現代日本社会において、一定程度のセカンドチャンスが存在することを明らかにしている。結論部では、社会の仕組み (構造) と個人の行動 (エージェンシー) という視点から、セカンドチャンスを保障するために個人が取りうる行動と、社会全体として取り組むべき課題について論じている。
 

(紹介文執筆者: 社会科学研究所 名誉教授 石田 浩 / 2026)

本の目次

序 章 セカンドチャンスを探して[石田 浩・石田賢示]
 1.格差の連鎖は断ち切れるのか
 2.セカンドチャンスという概念
 3.現代日本のライフコースにおけるセカンドチャンスに関する問い
 4.本書で用いる調査データ
 5.本書の方針と構成
 
第1部 ライフコース初期の不利とセカンドチャンスの可能性
 
第1章 初発の不利は乗り越えられるのか──出身家庭・背景にみられる不利とその後のライフコース[石田 浩]
 1.人生における初発の不利
 2.初発の不利とその後の成人期ライフコースにおけるアウトカム
 3.データ,変数の定義,分析方法
 4.初発の不利によるライフコースのアウトカムの違い
 5.初発の不利とライフコースの流れ
 6.ライフイベントによる不利からの脱出
 7.初発の不利は乗り越えられるのか
 
第2章 日本社会における高等教育機関夜間部の社会的意義[菅澤貴之]
 1.「見過ごされた存在」としての高等教育機関夜間部
 2.学校基本調査からみた夜間部の動向
 3.課題の設定・データ・分析対象の選定
 4.夜間部進学に対する規定要因
 5.職業達成に対する夜間部の効果
 6.まとめと日本社会における夜間部の社会的意義
 
第3章 大学等中退者のキャッチアップ可能性[下瀬川 陽]
 1.大学等中退者にとっての「セカンドチャンス」
 2.データと方法
 3.大学等中退者はどのような人びとなのか
 4.個人収入でみるキャッチアップ可能性
 5.まとめ
 
第2部 キャリアと経済的生活におけるセカンドチャンス
 
第4章 仕事探しは報われるのか──社会ネットワークによる無業者の再就職過程の格差[石田賢示]
 1.キャリアのなかで高まる無業リスク
 2.求職行動を左右する機会の問題
 3.分析に用いるデータと方法
 4.求職行動・社会ネットワーク・再就職の関連
 5.再就職過程のフェーズにより異なる社会ネットワーク効果
 
第5章 自営業者にとってのセカンドチャンス──収入・資産・仕事の特性に着目して[仲 修平]
 1.問題の所在──自営業者の「その後」を追う
 2.自営業層からの退出に関わる先行研究
 3.方 法
 4.分析結果──就業形態の変化/非変化と収入・資産・仕事の特性との関連
 5.考 察──自営業者にとってのセカンドチャンス
 
第6章 貧困の経験とセカンドチャンスとしての貧困からの脱出[林 雄亮]
 1.日本社会の貧困の現状と本章の目的
 2.パネル調査を用いた貧困経験の類型化
 3.貧困からの脱出というセカンドチャンス
 4.セカンドチャンスは開かれているか
 
第3部 メンタルヘルスからみた立ち直り
 
第7章  日常的な幼少期逆境体験がもたらすライフコース初期のメンタルヘルス不調の保護要因[百瀬由璃絵]
 1.こども家庭庁の新設置と子どもを取り巻く環境の深刻性
 2.子ども期の複合的な逆境体験
 3.データと変数
 4.分析結果
 5.社会関係の重要性
 
第8章  失業とメンタルヘルスに関わるSense of Coherence(SOC)と他者からのサポートの働き──男性を対象にして[池田めぐみ]
 1.失業とメンタルヘルス
 2.失業がメンタルヘルスに与える負の影響を緩和する要因
 3.データと分析方法
 4.失業とSOC・他者からのサポートの関係
 5.失業時におけるSOCと他者からのサポートの働き
 
第9章 親との死別経験からの立ち直り[俣野美咲]
 1.はじめに
 2.先行研究の知見と本章における検討課題
 3.親との死別経験がメンタルヘルスに及ぼす影響
 4.親との死別経験によるメンタルヘルスの悪化と回復
 5.死別経験からの立ち直りに向けて
 
終 章 人生挽回の可能性──明らかになったことと今後の課題[石田賢示・石田 浩]
 1.各章の知見のまとめ
 2.セカンドチャンスはどの程度存在するのか
 3.「これまでの人生経験に関する調査」にみる困難な経験と乗り越え方
 4.誰がセカンドチャンスを得られるのか
 5.格差社会の構造に制約されたセカンドチャンスと今後の課題
 
あとがき
索引
 

関連情報

プロジェクト:
CSRDA: 東大社研パネル調査プロジェクト
http://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/JLPS/
 
格差の連鎖・蓄積とライフコースに関する総合的研究
https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/uci/ja/projects/sdgs/projects_00082.html
 
書籍紹介:
あとがきたちよみ (『けいそうビブリオフィル』 2024年2月27日)
https://keisobiblio.com/2024/02/27/atogakitachiyomi_kakusashakainosecondchance/
 
書評:
泉田信行 (国立社会保障・人口問題研究所) 評 (『人口学研究』61巻p.89-92 2025年11月21日)
https://doi.org/10.24454/jps.2504003
 
斉藤知洋 評「新刊紹介」 (『社会保障研究』第9巻 第3号 通巻第34号p.395-39 2024年12月)
https://ipss.repo.ni.ac.jp/records/2000475
 
セミナー:
Nissan Seminar: Hiroshi Ishida (Tokyo), 'Are There Second Chances in Japan? The Life-Course Dynamics of Disadvantage and Recovery'  (Nissan Institute of Japanese Studies 2026年4月30日)
https://www.nissan.ox.ac.uk/event/nissan-seminar-are-there-second-chances-in-japan-the-life-course-dynamics-of-disadvantage-and
 

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