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「宇宙の視点」から地球のあり方を提言する

掲載日:2019年9月18日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 030

2013年10月、インドネシア・カリマンタン島パランカラヤで行われた現地調査では、町からそう遠くない泥炭湿地で泥炭が燃えているのが確認された。

対象を遠隔から測定するリモートセンシング(遠隔探査)技術は、航空技術と写真測量の技術とともに進化してきました。そして、20世紀後半に人工衛星が打ち上げられて「宇宙からの視点」を手に入れ、驚くほどの成果を獲得しています。「例えば、上空700kmの宇宙空間を周回している衛星は、地表の30cmの大きさの地物を認識できます。私たちが空に向かって手をふれば、それが誰なのかを宇宙から確認することができるのです」と語る生産技術研究所の竹内渉教授。その視点は可視データに留まりません。目に見えない近赤外、熱赤外、マイクロ波といったデータからは、雨になる雲とそうでない雲を見分けたり、地表のヒートアイランド現象の分布を測ったり、砂地の上に敷いた道路や橋の基礎建築物がどの程度沈んだかといったことも測ることができるのです。

竹内研究室のチームがインドネシアで行ったプロジェクトの目的は、熱帯泥炭地の二酸化炭素(CO2)の放出量を測ることでした。泥炭地とは、長い時間をかけて枯れた植物があまり分解されずに溜まってできる土地のこと。特に地下水位が下がるところでは泥炭に含まれる炭素が酸化し、CO2を多く放出することがわかっています。現地調査と、衛星のデータから降水量と気温データを過去にさかのぼって分析し、耕作を行うために設けた排水路が地下水位の低下に結びついていること、その結果としてCO2放出量が光合成による植物の炭素吸収量を上まわっていることなどを明らかにしました。

「こうした技術は、かつて海上の軍艦を探査したり、上空から爆弾を効果的に投下するといった軍事目的で推し進められてきた歴史があります。ところが、衛星からそのデータを得られる時代になって同じ技術が環境保全やそのための政策決定に科学的根拠をもたらすものとして利用されています。未来のリモートセンシング技術のあり方は、そうした平和利用に向かうべきだと私は考えています」と竹内先生は語ります。

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泥炭地では森林火災が起こりやすく、そのために死んでしまった樹木の様子。
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人為的開発によって水抜きされた泥炭地の排水路。土壌が層になって過去の地層がむきだしになっているのがわかる。
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もともとの泥炭湿地は地下水位が高く湿っていて、表面を覆う苔類植物により土壌は乾燥から守られている。
 
 (写真提供/朴慧美 博士研究員)

このプロジェクトが貢献するSDGs

陸の豊かさを守ろう気候変動に具体的な対策を住み続けられるまちづくりを安全な水とトイレをみんなにエネルギーをみんなに そしてクリーンに海の豊かさを守ろう

竹内渉 教授 | 生産技術研究所

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