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災害対応の“型”をつくり未知の災害に対応する

掲載日:2020年10月28日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 035

2016年イタリア中部地震の際、「BOSS」を説明する沼田先生。このフローチャートは、過去の災害を研究し、47種類、約500工程の業務フローが描かれている

2018年10月から始動した「災害対策トレーニングセンター(DMTC)」は、市町村、都道府県、国の行政職員をはじめ、企業の防災担当者、消防団や自主防災組織のメンバーなど、さまざまな人を対象に災害対応能力を高めるための教育訓練を行う機関。DMTCが訓練の根幹としているものは、災害対応業務の工程を示したフローチャート、名付けて「BOSS(Business Operation Support System)」で す 。

約1メートル × 2メートルの大型のポスター紙に印刷されたその図の横軸には、災害が起こる前に行うべき被害抑止策からはじまり、災害発生後に行うべき業務が1日後、1週間後、1カ月後、1年後という具合に時系列で並べられています。すべての工程は、救助・救命を担当する人、避難所の整備・運営にあたる人、破壊されたインフラを修復する人など、ステークホルダーごと縦軸に仕切られているため、「誰が、いつ、何をすべきか」を一望することができるのです。

「大事なのは災害対策業務の全体像をとらえることです」と説明するのは、DMTCの設立・運営に関わる沼田宗純准教授。「例えば、避難所を担当している人にとって、道路や上下水道の復旧を誰が担当し、どの場所からどのように進んでいくかという情報は、避難所を運営していく上で重要な情報ですが、BOSSによって全体の流れを見ることでそれを把握することができるのです」

訓練では、参加者一人一人が自分の担当する役割ごとにオリジナルの業務工程表を作成し、災害発生を想定してシミュレーション実証をします。

「もし、想定していなかった事態が起こったとしても、BOSSという標準モデルがあれば対応できる幅は広がります。さらに訓練を重ねて内容を更新すれば、精度を高めていくこともできます。まさに、空手でいう“型”が大切であり、BOSSは災害対応における“型”となるように研究を続けています」と沼田先生。現在、日本で作った標準モデルを英訳し、海外の国々の状況に合わせた標準モデルを作成する試みも進行中だといいます。

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神奈川県川崎市の協力のもと、新型コロナウィルス流行下における水害発生時の避難および避難所運営業務をシミュレーションした実証実験の様子

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静岡県南伊豆町で行われた研修の様子。静岡県職員、南伊豆町職員が参加した

このプロジェクトが貢献するSDGs

産業と技術革新の基盤をつくろう住み続けられるまちづくりをパートナーシップで目標を達成しよう

沼田宗純 准教授 │ 生産技術研究所/情報学環・学際情報学府

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