歓喜の北米出張 | 総長室だより~思いを伝える生声コラム~第24回
東京大学第30代総長 五神 真
歓喜の北米出張
8月、北米に出張しました。第一の目的は、全学協定を結んでいるブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)への訪問でした。昨年、国際総合力認定(Go Global Gateway)事業の一環として両大学の学生交流を行いました。横浜スタジアムでの両大学の野球部員による交流試合がメインイベントでした。今回は、慶應義塾大、カリフォルニア州立大サクラメント校を加え、4大学の国際リーグ戦を行うことになりました。東大は3位決定戦でUBCを3-2で下して3位になりました。安打数は東大4本に対してUBCが9本。失策数も東大のほうが多かったのですが、小林大雅投手が無四球で投げ抜き、勝つことが出来ました。小学校時代に従兄弟に連れられて東大野球部が大敗するのを神宮球場で見て以来、勝ち試合には縁がなかったのですが、バンクーバーの地で味わう勝利の歓喜は格別でした。
その前日に、UBCキャンパス内の学長公邸で夕食会がありました。学長公邸はかつてAPEC首脳会議の晩餐会場にもなったところで、クリントン、エリツィン両大統領が首脳会談で座った椅子に座ってサンタ・オノ学長と記念写真を撮りました。晩餐会では、オノ学長からThe President’s Medal of Excellenceが授与されました。UBCの目的や理想に顕著に貢献した者のみに与えられるものとのことです。総長就任以前から、長年東大とUBCとの研究交流などを進めてきたことを評価して頂きました。思いもかけない栄誉に、改めてオノ学長に感謝した次第です。また、キャンパスにはNitobe Memorial Gardenという日本庭園があり、日本人庭師が丹念に手入れをしていました。「太平洋の架け橋」となり、カナダで客死した新渡戸稲造博士を記念した素晴らしい庭園でした。まさに架け橋としてUBCとの交流をいっそう深めたいと感じた数日間でした。
その後に訪れた米国では、「東京大学グローバル・インターンシップ・プログラム」を通して、ダイキン工業のベンチャー支援施設でインターンシップ中の東大生たちに会いました。さらに、ヒューストンに所在する同社の巨大な工場に立ち寄りました。建物面積は本郷キャンパスの敷地面積とほぼ同じ37万平米。全米第3位の面積を誇る広大な規模に圧倒されました。
また、スタンフォード大学アジア米国技術経営研究センター所長のリチャード・ダッシャー教授との会談では、「東大の改革はdestructive innovation(破壊的イノベーション)だ」と言われました。社会の変革を駆動するという本学の改革は、アメリカの大学から見ても非常に先進的に見えるようです。アメリカで改めて背中を押してもらった気持ちになりました。
「学内広報」1526号(2019年9月24日)掲載