留学経験者インタビュー

カナダならでは! 留学への心理的な壁を壊そう

氏名:R・Oさん
所属学部・研究科(留学開始時): 法学部第3類4年
留学先大学名:マギル大学
留学プログラム名: 全学交換留学
留学期間: 2017年9月~2017年12月

留学を決めたきっかけは何ですか。

5~8歳の頃に海外に住んでいた経験から、漠然とした海外に行きたいという気持ちがずっとありました。大学入学後に留学したいと思っていて、実際に東大のGEfILのプログラムなどでアメリカやドイツ、フランスのパリ政治学院(SceincePo)の短期プログラムに行きましたが、もっと長期で留学したいという思いから、全学交換留学に応募しました。

留学に応募する過程で何か迷ったことはありましたか。

留学をする人は大抵、チャレンジ精神に溢れていて優秀ですよね。僕は法学部での成績は並くらいと思っていたので、自分でもいいのか、そもそも自分が応募に通るのか不安な思いはありました。そこで、過去に1年間留学した人や親に相談しました。実は親には、留学先でしたい具体的な勉強内容や、留学でこうした力を伸ばしたいという強い目的のない留学は無駄だと、はっきり言われました。でも、留学をした同期に聞くかぎり、必ずしも全員がそのような明確な目的を持って留学をしたわけではないと感じ、やや心の荷がおりました。留学してわかったのは、例えばアメリカからマギル大学にきていた留学生などは、留学を選択肢の一つとしてしか考えていない。だから、海外留学に対して、日本国内のプログラムに参加するのとは違うハードルを自分で勝手に設けてしまっていたと感じます。

留学中の生活について教えてください。

留学中は民間の寮に住んでいました。以前GEfILでハーバードに行った時などは大学の寮で、他の学生と仲良くなりやすかったのですが、今回は民間の寮で、まずマギル大学の学生が少なかったのが印象的でした。他の大学や語学学校、専門学校、工学系単科大学に通う人と、寮の仲間は通学先も様々でしたし、一度働いてから留学にきている人など、年齢層もバラバラでメンタリティに少しギャップを感じました。また、一人暮らしが初めてで、海外暮らしと一人暮らしの両方に慣れなければいけなかったので苦労しました。買い物が大変で、売っている野菜が何か分からなかったり、タマネギが何種類もあり違いが分からない中で自炊に挑戦したり。でも辛いという感じはなかったです。寮生活で、個室に閉じこもる感じではなかったせいだと思います。少し反省している点は、友だちがアジア系の人に偏りがちだったことでしょうか。お互いの価値観や浸かっている文化、例えば聞いている音楽とか全然違うので、仕方ないことかもしれないですが。

学業面について教えてください。

僕は法学部からの全学交換留学でしたが、マギル大学ではFaculty of Artsに所属したので、どの授業を履修するかで悩みました。最初は専門の延長にある科目を選んでカナダの連邦制などの授業を履修してみたのですが、カナダの政治の知識を前提として、ディスカッションして政策を作るといった内容は難しいと感じ、戦略を変えて大きく履修変更しました。例えば、日本の政治の授業で、自民党の歴史やイメージを前提にした話をすると、外国の人には分かりづらいのと同じ感覚だと思います。最終的に、ケベック出身ではない人がケベックについて学ぶ授業や、メジャーなカナダ史の授業など、東大にはない授業、カナダでしか受けられない内容であることを重視した授業履修になりました。

何か面白い授業はありましたか。

マイノリティに関する授業は、かなり突っ込んだ内容で興味深かったです。そもそも英語話者が大半のカナダではフランス語話者がマイノリティです。さらに原住民、イスラム教徒、ヒンズー教徒、シク教徒、ユダヤ教徒、日系カナダ人など、いろいろいます。こうしたマイノリティを意識したこともなかったですし、こういう授業は日本では受けられない、カナダならではの授業だと思います。また、この授業は日本でよく扱われる差別との関連よりは、マイノリティ自体にフォーカスし、マイノリティがマイノリティという自己意識をもつ仕組みや、9.11後の何事も安全保障に結びつける世界的潮流の中でマイノリティがどういう扱いの変化を経験したのかなどを扱っていました。東大の法学部では他学部科目の編入の上限の関係であまり積極的に他学部履修はしていなかったのですが、一度専門性の高い法学部での学びを経験した後に留学先で教養系の授業をとったので、教養科目の重要性を再認識しましたし、もう少し自由な履修が法学部でもできたらいいなと思いました。

留学した時期についてはどうですか。

本当は3年生で一年間の留学を希望していたのですが、全学交換留学の面接時期がGEfILの海外プログラムと重なっていて諦めました。就活も見据えて、4年生での半年間の留学にしましたが、期間が短くなったのはやはり残念です。でももちろん、4年間大学にいたからこそ留学先で得られた成果もありました。具体的には法学部でしっかり学んでから留学したので、専門科目と教養科目の比較ができ、教養科目の重要性を再認識できました。また、周りが就活を始める様子を見てから留学したので、将来について真剣に考えようという思いを持って留学しました。4年次の留学は、留学期間が短くなった以外でデメリットはなかったと思います。

留学はキャリア観に何か影響したと思いますか。

法学部は官庁や法曹志望の人が多く、僕も以前はそういう進路になると漠然と思っていました。でも留学したことで、民間就職の道にもいろいろ気付きました。法学部の友人から受ける影響は、限られた世界の価値観だと頭では分かっているのですが、自分がその中にいるとそれを意識する機会はなかなかありません。留学して様々な国から来た様々なバックグラウンドの人と出会い、自分自身が道を勝手に狭めていたこと、意外と他の道もあるという気付きを得ました。また、留学中にボストンキャリアフォーラムに行ったことも民間就職を意識するきっかけでした。真剣に就活している人や様々な民間企業に会えた影響が大きいと思います。

今後留学を目指す人へのメッセージをお願いします。

僕自身、留学前は、やっぱりチャレンジ精神に満ちたバイタリティがある人でなければ留学には行けないという心理的な壁を感じていました。でも留学に行く前に悩んでいても何も始まらないので、行ってから考える方が良いのではないかと今は思います。行ってから何か問題が起きることは当然ありますが、行かないと何も起きない、行かないまま悩んでも仕方ない、と伝えたいです。