蔵出し!文書館 第1回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第1回 安田講堂での卒業式はいつから?

 はじめまして、文書館です。東京大学文書館は2014年、東京大学に関する歴史的資料を管理・活用することで本学の学術多様性を支え、大学の価値向上につなげるために設置されました。このコラムでは当館が所蔵する、約140年に及ぶ東京大学の価値ある記録をご紹介していきます。
 さて、東日本大震災後の改修工事期間を経て、昨年から復活している安田講堂(正式名称は大講堂)での卒業式。読者の皆様はこの起源についてご存じでしょうか?今回、文書館がお蔵出しするお宝資料は、東京大学が初めて安田講堂で開催した全学卒業式の資料です。
 安田講堂は今から遡ること約90年前、1925(大正14)年に完成します。実はこの頃、東京帝国大学では、全学を挙げての卒業式は行われなくなっていました。卒業式の開催は学部に委ねられ、学部毎に卒業式をやったり、やらなかったりという状況になっていたのです(やらない学部ではただ事務で卒業証書をもらうだけ)。安田講堂の建設費用を寄付した安田財閥の祖、安田善次郎は、その寄附目的の1つに、卒業式への利用を掲げていましたが、この願いはすぐには実現しませんでした。安田講堂完成の翌1926年に大正天皇が亡くなり、1927年には大喪(天皇の葬儀)があって、喪に服することになり、新しいお祝い事は控えることになってしまったからです。また、各学部バラバラに卒業式をやっている内に、学部毎の慣例も出来上がってしまっていて、それを統一するのにも時間がかかったということもあります。
 そんなわけで、安田講堂が出来てから約3年後の1928(昭和3)年になってようやく全学卒業式が安田講堂で初開催されることになったのです。一見、中途半端にもみえる昭和三年から始まるこの資料はまさにその起源を示すものなのです。

(文書館特任助教・ 加藤諭)
今回の蔵出し資料
「卒業証書授与関係」
大学の式典に関する重要記録の一つ。総長の告辞草稿や、卒業証書授与式(卒業式)の式次第などの記録が綴じられています。

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