蔵出し!文書館 第5回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第5回 東京農林学校長、高橋是清

 高橋是清は、明治22(1989)年3月から約8 か月間、東京大学農学部の前身である東京農林学校長として就任しました。明治から昭和時代前期にかけて活躍した財政家、政治家です。
 当館所蔵で当時の動向がわかる文書に、『諸方往復明治二十二年』という2分冊の簿冊があります。東京農林学校と官庁や学校等諸機関との往復文書です。この中の東京農林学校長が発信した文書、他機関から受信した文書に、高橋是清本人が捺印したと思われる印(「高はし」や「是清」)や、署名した直筆の文字(「是清」)、書記官が作成した文書に朱筆を入れた文字などを見ることができます。就任当初から約1か月間の文書にはあらゆる案件に対する捺印がありますが、次第に代理印が多くなり、ついには限られた案件のみになります。限られた案件とは、役所や尋常中学校等からの入学募集要件の変更要請や試験科目の意見などに回答するものです。特許局長と東京農林学校長を兼任していた多忙な高橋は、然るべき学生を入学させることが校長として最大の責務だと考えていたのかもしれません。
 明治22年8月23日、農商務大臣井上馨による内閣総理大臣への請議が裁可され、東京農林学校の本科卒業生は学士を称することができるようになりました。9月4日改正の『東京農林学校校則』(S0026/SS6/0356)の小冊子に、高橋是清による「東京農林学校学生生徒心得」と「東京農林学校寄宿舎規則」が掲載されています。ここに、東京農林学校長としての成果が結実したのです。
 写真の通り、残念ながら資料の劣化がはげしい状態です。今後、文書館として修復のための資金獲得を目指し、資料のさらなる活用に寄与できるように努めたいと考えています。

(文書館教務補佐員・小根山美鈴)
今回の蔵出し資料
『諸方往復 明治二十二年』
(資料群名「S0026農学部前身組織関係資料」より。S0026/SS1/0279、0280:所蔵番号)

  

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