蔵出し!文書館 第9回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第9回 恩賜の銀時計

 「恩賜の銀時計」とよばれる銀製の懐中時計は、天皇(あるいはその代行)が東京帝国大学の卒業証書授与式に「臨幸」して、優等卒業生に「下賜」した褒賞品です。優等卒業生に授与されたので優等生制度ともよばれ、1899年から1918年まで続きました。
 もともとは軍学校に授与され、東京帝国大学をはじめ、京都や九州、東北、北海道の各帝国大学、学習院や商船学校に与えられるようになりました。
 東京帝国大学では、卒業生の人数が増えると授与者も増加している傾向がみられます。優等生の選定について全学に共通する規定は現在のところ見つかっていません。首席卒業生であっても優等生とは限らず、成績だけでなく学生の人物評価も選抜基準となっていったようです。授与を辞退できたかどうかは不明です。最終的に東京帝国大学では323人に授与されました。
 東京大学文書館が所蔵するのはそのうちのひとつ、1913年に工科大学造兵学科を優等で卒業した阿久津国造氏に下賜されたものです(F0132)。「恩賜」と表記されますが、時計の表面には「御賜」と彫られています。遺族からの寄贈によるもので東京帝国大学の学生に授与された銀時計を今に伝える貴重な一点です。
 優等生全員の氏名や所属は、『学士会月報』や『官報』、『卒業証書授与名簿』を調査した中野実の研究により明らかになっています。 参考文献:中野実『東京大学物語 君がまだ若かったころ』吉川弘文館、1999年。

(文書館教務補佐員・小川智瑞恵 )
今回の蔵出し資料
「恩賜の銀時計」(F0132)

「御賜」と彫られている。
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