蔵出し!文書館 第16回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 

第16回 ビラ一考のとビラ(扉)

 当館では、本学の学生運動にかかわるビラを多く所蔵しています。今回は、昔の学生部が保存していたビラをご紹介します。ビラの「かたち」と、当時の学生部が残した「かたち」から何が見えるのか、探ってみたいと思います。
 古くは1926(大正15)年の学友会(学内学生団体)によるビラが存在します。古文書の書状に似た、横幅のある形状です。粗目の藁半紙に漢字・カタカナの活字が印刷されています。昭和に入ると、洋紙・和紙の種類、色、大きさが多様になり、ガリ版刷りに移行します(写真1)。1931(昭和6)年には、黒だけでなく赤インクの文字も増え、挿絵も多くなり、目に訴えるビラに進化するのが特徴的です。東大紛争期(1968~1969年)には、藁半紙(B4判)にゲバ字で縦書き・横書きを併用した、ガリ版刷りのビラが大量に出現します。紛争以降もビラはコンピュータの普及に伴った様式で作成され続けます。ビラの「かたち」を見るだけでも、日本の軽印刷技術の歴史の一端を垣間見るようです。
 次に、学生部が収集したビラの「かたち」です。昭和初期のビラは台紙に貼られた紐綴じスクラップブックです。昭和6年になると、同様の作成方法でビラの周りにスタンプが押印される形式になります。スタンプは、ビラを取得した年月日、時刻、場所や、手段(放置、撒布など)、そして誰によって学生部へ提供されたのかを記入するためのものです。例えば写真2の場合、5枚のビラは各教室の階段廊下や手洗所に貼付という内容が記入されており、状況の把握に役立ちます。以後、学生の動きがより活発化したためか、一部のビラに「特務報告○年○月○日」というスタンプで押印された紐綴じスクラップブックが作成されます。黒表紙(厚ボール紙にクロスを貼ったもの)に金色箔押文字で「東京帝国大学学生課」と、物々しさを漂わせるものです。日々情報を収集し、大学側へ報告する立場にあった当時の学生部の姿が見えてきます。時代を経て、この時代の学生部のありかたも役割も変わっていきます。ビラ単体では分かりえないことを、学生部が残した「かたち」で見る、まさにアーカイブズの楽しみ方のひとつと言えるかもしれません。

 

(学術支援職員・小根山美鈴)

 

今回の蔵出し資料 「檄 自昭和六.一.二○ 至昭和九.四.三」(S0036/SS01/0003)

写真1

写真2

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