蔵出し!文書館 第24回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第24回 100年前の鉄道マナー

 以前「デジタル化された公文書綴」として『文部省往復』をご紹介しました。今回は文部省以外の各省庁と本学との往復文書『官庁往復』についてご紹介します。
 『官庁往復』は、各省庁からの様々な鑑定依頼や施設などの借用依頼、大学からの出火届や紛失届、海外出張に伴う旅券交付願、書籍や端艇等の貸し借りなど、多種多様な内容の文書が綴られており、『文部省往復』同様2013(平成25)年に重要文化財の指定を受けました。
 この『官庁往復』には文書とともに添付資料として冊子等が綴じられていることがあります。例えば報告書(鑑定結果や天体観測などの報告書)や刊行物などです。『官庁往復 大正八年』(資料ID:S0003/35)の中に配付依頼の文書とともに綴じられている添付資料『鐵道から家庭へ』は、1919(大正8)年12月に鉄道院が作成した鉄道利用案内です。この冊子から100年前の日本の姿を垣間見ることができるので少し紹介したいと思います。
 105ページからなる挿絵のない冊子には、電車の乗降マナー(降りる人が先)や「老幼婦女病客等」に席を譲ることなど、今でも呼びかけられているものがある一方、「列車に瓦や礫を投げぬやう」、動いている汽車から「飛乗り飛降りをなさらぬやう」、「火薬や爆発性の危険品を御持込みにならぬやう」、など時代を感じさせる見出しと実例が挙げられており、これらのことが行われていたことに驚きます。実際に、ある一人の乗客が職業用のダイナマイトを荷物の中に入れ網棚に置いたところ、ふとした拍子に床に落ち、爆発して電車を破壊、本人はもちろん乗客数名の死傷者を出したとあります。また、車内において弁当の殻や果物の皮、煙草の吸殻などが手当り次第に投げ散らかされている様や、そうしたゴミを車内だけでなく窓からも投げ捨てているとあります。ひどいことに、窓から投げ捨てられたものが線路見回りの作業員に当たり、重傷を受けて気絶したことがあったそうです。
 ここではちょっと紹介できない内容も書かれている『鐡道から家庭へ』。当館では所蔵対象としないような刊行物にこうして出会うのも資料整理の面白さです。

(事務員・村上こずえ)

今回の蔵出し資料
『官庁往復 大正八年』(S0003/35)

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