蔵出し!文書館 第26回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第26回 138年前のコレラ流行と東京大学の対応

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響をうけ、本学の令和元年度学位記授与式・卒業式は規模を縮小して挙行、そして今年度入学式式典も中止になり、キャンパスへの入構なども大幅に制限される事態となりました。こうした現状と類似した状況が、過去にも幾度か起きていたことが当館資料に残されています。今回は明治15年のコレラ(虎列剌/乕列剌)流行時における本学の対応についてひもといていきましょう。
 この年の流行は、日本において明治期以降最大のコレラ流行となった明治12年より規模は小さいものの、最終的な国内罹患者は5万人超、死者も3万人を超えました。5月末に東京でコレラ患者が確認され、東京府は7月に東京検疫局を新設していることからも、東京での危機感の高さがうかがえます。
 当館所蔵の『校中往復 明治十五年分 全壹冊』(S0005/11)に綴じられている6月16日付「學生生徒中虎列剌病患者有之節心得方ノ件」には、「該病ノ発シタル舎或ハ教場ハ医員ニ於テ夫々消毒法ヲ行ヒ其舎又ハ教場ヲ鎖スベシ 尤モ発病室同舎ノモノハ消毒法ヲ行ヒシ后豫備室ニ送リ室内之物品モ消毒法ヲ行フニ此レハ携出スルヲ許ササル事」と罹患者が発生した建物・教室の医員による消毒や封鎖処置が記されていますが、このあとには「該教場或ハ舎決シテ餘人ヲ入ラシムヘカサル事」と念を押した一文が朱書きで付記されています。この文書にはこうした朱書きや付箋が多くみられ、猛威をふるう流行病の対策に追われる大学の慌ただしい雰囲気が感じられます。
 このほか、文部省へ出された学位授与式の延期伺いや、罹患者と接した際の出勤差し控えについての文書が残されており、138年前の本学においても、感染状況を把握しながら柔軟な運営につとめていた様子がわかります。

(特任研究員・千代田裕子)


今回の蔵出し資料
『校中往復 明治十五年分 全壹冊』(S0005/11)

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