蔵出し!文書館 第27回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第27回 研究資料、東京大学にかく集へり

 東京大学の膨大な研究資料群は、近年デジタル化による積極活用が進んでいます。では、それらは如何にして本学に蓄積されてきたのか。今回は、東京大学設立後間もない明治10(1877)年の、地質学研究資料の事例を「文部省往復」より紹介します。
 発端は、設立から一か月、5月25日付文書で、法文理三学部総理加藤弘之から文部省へ、地質学研究のため「内国火山地震等之事ヲ記載セル書類文書」貸与(謄写後返却)の依頼でした。これを5月31日付で文部省から各省・府県へ照会し、資料収集が開始されます。
 司法省・内務省から「群書中から探し出せない、人員を派遣せよ」、「該当記述がある書名を示せ」と即答、6月に大学が調査員を派遣します。海軍省からは「兵学校に海外の分なら…」と回答がある一方、北海道開拓使からはライマンの「北海道地質報文」が提供され、各省庁の個性が反映された結果がでました。
 また各府県も活躍します。照会の翌日、東京府からは「地質研究に益するか不明だが、安政地震の難民救助の文書なら」と行政文書管理の鑑のような回答があり、長野県からも7月2日には善光寺地震関係等10冊分の資料が送付されます。また、三重・青森・愛知・群馬の各県は「県庁に該当文書なし」のため地域調査を行ない、県庁職員や地域住民の個人所蔵資料を続々提供しました。さらに栃木県では、調査をしても伝説や「老爺之口碑」しかないと嘆き、代わりに明治6年の大蔵省噴火顚末届を探し出しました。各県の文面を紹介できないのが残念ですが、最先端の学術貢献への強い意思が伝わる筆致です。そして、12月25日付で照会回答完了、業務完結しました。
 さて、その後これらの資料はどうしたのか。答えの一つが、地震研究所図書室の特別資料データベースに見ることができます。例えば長野県が提供した「地震後世俗語之種」は「地災撮要」地震之部巻ノ二(L001077)に所収され、彩色絵図は今も鮮やかです。さらに関連資料には、明治10年以降も同様の収集が行なわれた可能性も。今後、資料情報連携により、さらなる発見が期待できそうです。現在の学術資産のルーツ、文書館の記録から探ってみませんか。

(助教・秋山淳子)


今回の蔵出し資料
『文部省往復 明治十年分 四冊之内乙号』より(S0001/Mo020/0103)

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