蔵出し!文書館 第34回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 

第34回 筋骨運動器、何キロ持てる?

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として在宅勤務が急速に広まり、また外出制限も重なって運動不足を感じたかたは少なくないのではないでしょうか。もしかすると、これを機に筋トレを始めたかたもいらっしゃるかもしれません。
 筋トレで用いられるツールのひとつにダンベルがありますが、日本では明治期から体操授業で使われていました。とはいうものの、当時のダンベルは木製の軽いもので、両手に持って手足を伸縮させ動きに勢いをつけたり、リズムにあわせてダンベル同士を打ち付け、音を鳴らしたりするといった使い方をしていたようです。



 画像は、明治9年、宮内省より東京開成学校が製造した「筋骨運動器」の送付を依頼された文部省から東京開成学校へ宛てた照会文書に描かれたダンベルの図面です(S0001/Mo018/0102「筋骨運動器械製造ノ件」)。依頼を受けた東京開成学校は、およそ一ヶ月後に大中小3種類のダンベルを宮内省に納めました。納品したダンベルは、両球が着脱可能で、球のなかに入れる鉛の量で重さを調整できるようになっており、大・中サイズのダンベルは一対で約12kg、小サイズのダンベルは一対で約4kgというものでした(S0004/09「筋骨運動器械ノ件」)。
 前述の木製ダンベルを用いた体操は、明治11年に設立した「体操伝習所」(体育の研究と体操科教員の養成を目的とした機関)の外国人教師によって日本にもたらされました。しかし当館の資料から、東京開成学校においては体操伝習所の設立前に「筋骨運動」を目的としたダンベルを製造していたことがわかります。
 当時なぜ東京開成学校でダンベルを製造していたのか、そして宮内省に納められたダンベルはどなたがお使いになったのかはわかりません。宮中で当時最新式の器具を使ってどのような運動が行われ、その結果どのくらい鍛えられたのかも気になるところです。
 
(特任研究員 千代田裕子)
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