蔵出し!文書館 第35回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 

第35回 資料が映す、時代の“あたりまえ”


(資料ID P024396)

 あれ、このコラムは古いおもしろい資料を紹介するコーナーじゃなかったっけ?挿入する資料画像を間違えたのかな?
 と思った、そこのあなた。いえ、文書館のお蔵には、このようなつい最近作成されたもの、しかも一点ものではない印刷物もあるのです。
 文書館では、大学で作成され大学の活動を跡づける文書を集めて保存していますが、それはいわゆる事務文書に限りません。学内各所で作成される印刷物も、大学の活動を伝える重要な資料です。中でも文書館が集中的に保存しているものは、短命の印刷物や頒布先の広がりがあまりないものです。部局で発行されるニュースレター、時間が経つと廃棄される入試の募集要項や時間割、イベントの配布物やちらし。これらは一目で時代を感じられる、とても貴重な資料です。
 では、今回紹介するちらしからはどのような時代が浮かび上がってくるでしょうか。まず2011年に女子学生を増やすためのイベントがあったということが、この時点での大学の学生の男女比に関する問題意識を示しています。この年の3月、総長の諮問を受けて「女子の進学促進、女子学生比率向上への提言」という答申が出され、この問題に本腰を入れて取り組み始めたことが背景にありそうです。また、ちらしデザインからは「女子=ピンク」というステレオタイプの発想も透けて見えます。ジェンダー研究の素材になりますね。
 コロナ禍の昨年から今年にかけて作られたちらしには、オンライン開催と書かれていることが多く見られます。有効期間の短い情報ほど、その時々の“当たり前”“無意識”が説明なく現れるため、時代を如実に反映しています。100年後、200年後の人がこうした資料からどういう情報を読み取るか、想像するとわくわくしませんか。
 ところで、これまた今は当たり前になったQRコードがここにもあります。

 ちょっと読み込んでみてください。何が表示されますか?文書館はこのようなデジタルの情報の保存問題とも格闘しています。
 お蔵を開けるとそこは、現在過去未来、無限なのでした。
 
(准教授・森本祥子)
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