蔵出し!文書館 第37回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 

第37回 家族とともに

 当館では、様々な写真帖を所蔵しています。その多くは卒業アルバムや大学の記念アルバムですが、今回は、筆者イチオシの「同窓会」のアルバムをご紹介しましょう。
 卒業・記念アルバムは、大学の建物や、その時の総長をはじめとする教師、生徒の個人写真、そして校内の建物の前や旅先での集合写真、という構成が一般的ですが、農科大学の同窓会組織「林友会」の、大正6(1917)年12月印刷『林友会員部会写真帖 第一輯』(F0025/S01/0027)は、少し趣向が異なります。なんと、その人とその家族、ひいては飼い犬や馬なども一緒に写っており、たいへんプライベートな一コマが公開されているのです。写真帖目次によると明治22(1889)年から大正4年までの卒業生が対象で、印刷時の大正6年当時、卒業から年数が経っている人は家族とともに、年数の浅い人は学生服姿で、という被写体の特徴的な傾向もあるようです。



 中でも筆者がとくに興味を持ったのは、写真帖29頁に掲載されたこの写真です。明治39年卒業の岩崎氏は向かって左端の男性と推測できますが、この写真の主役は子供たち、とくに中央奥の琵琶を構えた少女ではないでしょうか。この琵琶、弦を通して結ぶ「」(少女の右腕の斜め下の部分)が4つ、棹(細い部分)にはじゅう(フレット)が5つ確認できます。右腕が置かれた琵琶の胴の部分が白いことなどから、この琵琶は、明治後期から大正にかけて大流行した「筑前琵琶」と考えられます。胴の白い部分の素材は、桐です。右手がちょうど机で隠れているのが残念ですが、きっとばちを持っていたことでしょう。
 とっておきの家族写真を提出したのかな?などと想像しつつ、当時、享受されていた文化や日常の様子が展開されたアルバムの、一寸マニアックな楽しみ方をご紹介しました。
 
(学術専門職員 星野厚子)
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