蔵出し!文書館 第38回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第38回 スケッチからたどる学びの過程

 今回ご紹介するのは、東京帝国大学で農学を学び、卒業後は農業教育に携わった谷口義治という人物の資料です。当館所蔵の谷口の資料群(F0116)には、農学部在学時のノート類を中心に、旧制第五高等学校に通っていた時代の資料も含まれており、その中に実験に使ったバッタと蛙を描いたスケッチ(F0116/S1/094)があります。

 バッタの触角のスケッチ

生物スケッチは対象の生物の身体構造を理解する為にもよく観察し丁寧に正確に描く事が求められますが、画像のバッタの触角の節一つ一つが描かれているのや翅脈の細かな描写からは谷口も正確に丁寧に描く事に重点を置いてスケッチをしていた事が窺えないでしょうか。

  バッタの前翅と後翅のスケッチ

 谷口の旧制第五高等学校時代の資料は他にも英作文や動物学、数学のノート類が残っており、特に動物学は農学と関わりが深い分野です。こうした高等学校での学びを示す資料からは、谷口が大学で農学部に進学するまでの一過程が窺えます。加えて、高等学校時代の若い頃のノート類を捨てずに持っていた点からは、谷口が高等学校から大学に至るまでの学生時代の学び全般を重要なものと見ていたのかもしれないことがわかります。今回ご紹介の資料は、谷口義治という人物が一学生から農学教育者となるまでに経た学びの過程を垣間見る資料とも言えるでしょう。
 今回ご紹介したスケッチのような絵図資料は「見る」だけでも楽しむことが出来ますが、このように資料の持つ特徴や作成される過程に目を向けてみたり、「何故残っているのか」という事を考えてみると、より深く楽しめます。文書館で資料を閲覧される際には是非様々な視点からお楽しみください。

(学術専門職員・井上いぶき)
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