蔵出し!文書館 第40回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第40回 関東大震災とアーカイブズ資料

 9月1日の「防災の日」から秋にかけてのこの時期は、各地で防災訓練が実施されます。今回取り上げるのは、来年100年の節目を迎える「関東大震災」の記録です。
 大正12(1923)年9月1日に発生した関東大震災は、首都圏全域に甚大な被害をもたらし、本学も建物の多くが損壊や延焼の被害を受けました。当館所蔵資料のなかに、9月3日付で作成された被災状況報告が残されています。「一日正午大地震ノ為メ医化学教室ヨリ出火、生理薬物教室図書館法文経全部応用化学数学教室本部御殿等焼失。全市七分通全滅避難民ニテ校内混雑中。」とあり、震災による被害と構内に集まった罹災者の様子を伝えています(「震災ノ為各部局移轉ノ件」S0005/25/0142)。大学では罹災者に運動場や利用可能な施設を開放し、さらに食糧支援などを実施しました。当時の職員が撮影した写真には、構内で古着を選ぶ罹災者の姿も残されています。これらの救護活動は、帝大生たちが組織した学生救護団が中心となって展開されました(「震災救護ニ関スル事項」S0001/Mo187/0005)。

(関東大震災 古着を選ぶ帝大内避難民) F0064/0012


 キャンパス復興では、震災から二十年余にわたって予算が計上されました。大学会計課が作成した震災復旧費関係の綴には、震災直後に応急的に建てられた仮建物が6、7年経っても使用されていることを憂いた意見などもみられますが、年を追うごとに綴が薄くなり、やがて文書自体が作成されなくなる過程に復興の歩みを感じられます(「東京帝国大学会計課文書」S0061/28~33)。
 文書館ではこれらの他にも震災関連資料を所蔵しています。災害を振り返るとき、私たちは被害の深刻さや復興した姿に目を奪われがちですが、災害対応や長期にわたる復興プロセスを後から検証できるよう記録を残し、将来にいかしていくこともまた防災の取り組みのひとつだと言えるでしょう。
(特任研究員 逢坂裕紀子)
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