蔵出し!文書館 第43回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介
 
 

第43回 刑務所は意外と身近?

 みなさんは、刑務所の作業で作られた製品を買ったことはありますか。最近では、洗濯用スティック石鹸は買い占め問題が起こるほど、とくに人気のようです。
 今回ご紹介する資料は、大正13年の、小菅刑務所からの刑務作業品の用命依頼の文書です。(「刑務者作業製作ニ係ル諸種製品供給ニ應ス可クニ付御用命方照會越ノ件」『官庁往復 大正十三年』(S0003/40))。大学では依頼を受けて、各部局が直接申し込むようにと学内周知しています 。

「刑務者作業製作ニ係ル諸種製品供給ニ應ス可クニ付御用命方照會越ノ件」
『官庁往復 大正十三年』(S0003/40)


 まさかの刑務作業品の販促文書に驚きましたが、こうした作業物品販売や業務引き請けは、実は、明治5年に「監獄則並図式」が定められた時から、すでに制度化されているものでした。
 ところで、東京大学には刑務作業品が間違いなくひとつ残されています。安田講堂の基礎に使われている小菅刑務所製の煉瓦です。平成25・26年に行われた改修工事の際に、桜花の刻印のある通称「小菅煉瓦」が確認されています(東京大学大講堂(安田講堂)改修工事報告書)。小菅刑務所は、もともと高品質の煉瓦をつくる工場があった場所を引き継いで設置されたもので、小菅煉瓦は軍施設や官公庁に多く使われたそうです。それならば安田講堂で採用するのも当然のように思われますが、じつは明治末期にはすでに煉瓦製造事業は大幅に縮小されており、関東大震災でついに操業中止となりました。そうした状況下でなお小菅煉瓦が選ばれた理由は筆者には確認できていませんが、いずれにせよ、安田講堂の小菅煉瓦は最晩期の貴重なものと言えそうです。
 学内には、まだ他にも刑務作業品が残されているかもしれません。そこの古い帳簿も、もしかして・・・ 
(小菅煉瓦について成瀬晃司先生(埋蔵文化財調査室)に多くの御教示をいただきました)
(准教授・森本祥子)
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