蔵出し!文書館 第44回

蔵出し!文書館
収蔵する貴重な学内資料から
140年に及ぶ東大の歴史の一部をご紹介

第44回 トイレを使うときは?

 日本に近代的水洗式トイレが導入されたのは明治中頃ですが、大正期や昭和初期まで日本中のトイレといえば、汲み取り式が一般的だったそうです。 大正14(1925)年に竣工した安田講堂(正式名称は大講堂)には1階と2階に計4箇所、4階に貴賓用トイレ1 箇所が設置されていました。安田講堂を 設計した内田祥三の当館所蔵資料(『内田祥三関係資料』F0004)を探っていくと、給水、排水、汚水浄化処理などの「衛生工事」の項目を確認する ことができ、当時では稀であった水洗式トイレの工事が含まれていたと考えられます。
 その後、安田講堂が完成してまもない昭和3年。営繕課より庶務課に出された水洗式トイレ(当時は水洗便所)の取り扱いに係る文書には、「従来水洗便所取扱上ノ不馴レヨリ来ル機能ノ障碍甚ダ多々」と書かれており、次の各項を励行することを求めています。
  一、小便所ノしすたーん(水槽)ニ送水スル水ヲ止メ或ハ余リ細ク加減セザルコト
  一、大便所ニ於テ使用スル紙ハ柔キチリ紙トシ硬キ洋紙又ハ丈夫ナル日本紙ヲ用ヒサルコト
  一、便器ノ中ニハ烟草ノ吸殻、ぼろきれ、其他管ノ屈曲部ヲ閉塞スル品物ヲ投セサルコト
  一、用便ノ後ニハ便器前方ノ把手ヲ手ヲ以テ軽ク圧シテ水ヲ出シ決シテ足ヲ以テ之ヲ踏ミ付クルガ如キコトヲナサザルコト
 当時のトイレの壁などにこのような注意書きが掲載されていたかは定かではありませんが、文面を見る限り利用者への注意書きであったように思います。
 安田講堂はその後、補強工事や大掛かりな改修工事を経て、数が少ないといわれていたトイレも多く増設されました(『学内広報』no.1464、2015.2.23 参照)。改修工事によりトイレの場所も設備も大きく変わっていきましたが、トイレの注意書きは今にも共通する内容があって興味深いです。

(助教 元ナミ)

今回の蔵出し資料
→「水洗便所ノ所置及取扱法ニ関スル件」『部局往復 昭和三年』(S0005/28/0089)より

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