蔵出し!文書館 第48回

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収蔵する貴重な学内資料から
140年を超える東大の歴史の一部をご紹介

第48回 生地見本がついた公文書~昭和4年の木製オフィス家具納入~

今回ご紹介するのは、昭和4年に東京帝国大学と東京高等工芸学校(現・千葉大学工学部)の間で交わされた、木製オフィス家具の製作発注から納入に関する文書です(S0003/44/0052『官庁往復 昭和四年 下巻』「片袖机外一点代納入告知書ニ関スル件」)。この文書には、東京帝国大学から東京高等工芸学校に対して木製の事務用片袖机と回転椅子、合計42点の製作を発注したこと、それらがおよそ1ヶ月で納品されたこと、代金は960円であったこと、などが記されています。

一連の文書には、簡単な家具図が添えられた見積書も含まれています。下の画像は、回転椅子の図面です。

図面上部に記された仕様概要をみると、椅子の材質はナラで、張り地として紺色のテレンプ(パイル織物の一種)が用いられていることがわかります。そして、仕様概要の傍らには、紺色の布地が添付されており、現在もきれいな状態で残っています。納品された椅子のイメージは描かれた図から想像することはできますが、傍らの生地見本に触れることによって、想像の解像度が高くなるように感じられます。本文書は、当館のデジタルアーカイブからもご覧いただくことはできますが、布地の質感まではなかなかお伝えしきれないのが残念なところです。

なお、オフィス家具の形式や寸法、品質といった標準規格「日本事務用卓子及椅子単純化規格」が定められたのは昭和9年のことですが、本件発注先の東京高等工芸学校木材工芸科にはこの規格の原案作成で中心的役割を果たした木檜恕一が教授として在籍していました。昭和4年に納入されたこの片袖机と回転椅子も、のちの標準に近いものだったのかもしれませんね。

(特任研究員・千代田裕子)

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