蔵出し!文書館 第58回

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収蔵する貴重な学内資料から
140年を超える東大の歴史の一部をご紹介

第58回 幻の「学生会(古在記念館)」建設の記録を探る

 かつて本郷キャンパスに学生会館を建設しようとする計画があったことをご存じでしょうか。『学内広報』第1576号「奥深き第二食堂建物の世界」でも触れられていますが、第二食堂の側に接続する形で学生会館を建設する構想があり、当時の『帝国大学新聞』には「古在(こざい)会館」とも略して紹介されています。
この構想は、第10代総長・古在由直(よしなお)の功績を記念する事業として生まれました。古在は大正9年に総長に選任され、関東大震災後の復興や研究施設の整備に尽力しました。しかし、病気のため昭和3年に辞任し、昭和9年に逝去しました。
 その後、学内外の有志により、古在の顕彰事業として、体育館の建設計画が持ち上がります。昭和10年には「古在先生記念事業実行委員会」が組織され、翌11年には「古在先生記念館建設委員会」(以下、委員会)が設置されました。同時に、10万円規模の寄附金募集が始まりました。
 当館所蔵の『内田祥三関係資料』には、この記念事業の経過を示す一連の記録が残されています。「古在先生記念館」は、委員会設置や募金開始の段階で学生会館として建設する旨が記されており、当初の体育館建設計画から趣旨が変化したことがうかがえます。


「古在先生記念館建設寄附募集趣意書」(F0004/A/11/14『古在先生記念事業』)

 昭和13年5月末時点で、最終的に集まった寄附金の総額は67,933円06銭に達しました。しかし、戦時下の鉄材統制や物価高騰の影響で建設許可が下りず、計画は実現に至りませんでした。その経過は、当時の総長であり委員長を務めていた長與又郎(ながよまたろう)の日記(F0027『長與又郎関係資料』)などにも記録されています。これらをさらにたどることで、未完の計画の経緯がより深く見えてくるかもしれません。

(助教:元 ナミ)

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