株式会社ニトリホールディングス 代表取締役社長 似鳥 昭雄 様

第12回ゲスト 

nitorisama



株式会社ニトリホールディングス 代表取締役社長

似鳥 昭雄 様

日時: 2014年5月14日(水) 19:00~21:00
場所: 山上会館2階会議室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.html
ゲストスピーチテーマ: 「2032年への挑戦~ロマンの舞台は、世界へ。」

紹介

昭和19年3月5日生まれ
昭和42年12月 似鳥家具店創業
昭和47年 3月 会社設立

主な役職
日本チェーンストア協会 副会長(平成22年4月~)
日本経済団体連合会 幹事(平成20年5月28日~)など

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【関係リンク】
http://www.nitori.co.jp/

報告


私は27歳の時、アメリカでの「家具研修セミナー」に参加し、大変なカルチャーショックを受けた。
商品が日本の3分の1の価格で売られており、さらに売られているモノの品質や機能も素晴らしく、どれも使う側のことを考えて作られていた。
アメリカでの研修に参加したのを機に、日本人の暮らしに役立つこと、世の中の役に立つことをやりたいと考えるようになり、「欧米並みの住まいの豊かさを、日本の、そして世界の人々に提供する」というロマンを抱くようになった。
ニトリが安さをひたすら追求しているのも、値段以上の品質のものを作ろうと努力しているのも、すべての原点はそこにある。

┃ビジョン

以上のロマンを抱いた私は、長期的なビジョンを練ることとした。
アメリカは豊かさを築くまでに120年かかったが、それを真似するだけであれば60年でできるはずと考え、この60年を第1期の30年と第2期の30年に分け、何をすべきかを考えた。

1. 第1期30年計画(1973~2002)
第1期については、日本一に向けて、以下を目標として掲げた。
・100店舗、売上高1,000億円
・ローカルからリージョナルへ、そしてナショナルへ
・札証(1989年)から東証2部へ、そして1部上場(2002年)へ
・家具専門から家具調度まで視野に入れたホームファニシングのフォーマットを日本で初めて確立

第1期30年の実績では、1年遅れであったが計画を達成することができた。

2. 第2期30年計画
第2期については、世界一に向けて、以下の目標を掲げている。
・2012年 300店舗 売上高3,488億円
 「トータルコーディネートのニトリ」へ
・2017年 500店舗 売上高5,500億円
 日本の地方の暮しを変革。海外チェーン展開の本格的スタート。
・2022年 1000店舗 売上高1兆円
 国内のドミナントエリア化により日本の暮らしの変革へ
・2032年 3000店舗 売上高3兆円
 世界の多くの人々の豊かな暮らしに貢献。世界A級の”暮らし提案企業へ”

┃ニトリグループの概況

このような長期ビションの中で、現在のニトリグループの概要は以下の通りである。
創  業: 1967年12月(創立46年)
設  立: 1972年3月
売 上 高: 連結3,876億円(2014年2月期実績)
経常利益: 連結 635億円(2014年2月期実績)
資 本 金: 133億円(ニトリホールディングス)
事業内容: 家具、インテリア用品の製造物流小売業
        海外輸入品・海外開発商品の販売事業他
店 舗 数: 331店舗 2014年2月20日現在【海外含む】
従 業 員: 24,307人 2014年2月20現在
         (在籍人数・・・頭数換算)
株  式: 東京証券取引所一部上場(2002年)
        札幌証券取引所上場(1989年)

1. 投資資金としては、ニトリグループで400億円から450億円を有している。
この投資資金を使った店舗の出店は、不況で建設費が下がったころを好機と見て行っていく予定である。
2. ニトリグループの構成をみると、2010年に設立された持株会社であるニトリホールディングスの下に、2014年2月20日現在で、日本国内に全6社、19,407人の従業員が、海外に全11社、4,900人の従業員が在籍している。
グループ構成各社の中で最大の規模を誇るのは(株)ニトリであり、同社の社長にはこれまで私が就任していたが、5月21日から白井俊之が社長に就任し、今後、ニトリグループでは、国内は白井が、海外は私が見ていく予定である。
3.最大の経費は人件費である。
労働生産性の目標値は1千万円であるが、ニトリグループの成長の記録を見ると、労働生産性は1972年設立時の800万円から2013年1,632万円へ2倍に上がっている。
社員の平均年齢については、柔軟性を保つべく35歳以下に押さえる目標を掲げているが、当初よりずっと達成している。
一方、店舗の寿命については20年と考え、スクラップアンドビルドを繰り返して平均店舗年齢を6年以下とすることを目標としているが、この目標値についても概ね達成している。
4.業績の推移をみると、ニトリグループは、27期連続で増収増益を達成した。
これは、上場企業で一番の記録である。
5.店舗数の推移をみると、ニトリグループは、最初に100店舗を達成するのに36年かかったが、次の100店舗は6年、その次の100店舗は3年で達成している。
これには、社員の成長が大いに貢献している。

┃創業から日本一へ

ニトリグループの創業から日本一までの軌跡の中で、特筆すべき事項は以下の通りである。
1.1967年12月、23歳の時に、似鳥家具店「西店」30坪をオープンさせ創業した。
2.1971年6月、27歳の時に、道内初の郊外大型家具店「北栄店」250坪を2号店としてオープンした。
  ただ、売り上げは伸びず、多額の借金を抱えることとなった。
3.ちょうどそのころ、アメリカでの「家具研修セミナー」への誘いがあり、親戚から40万円を借りて参加した。
  そこで受けた衝撃は前述の通りであるが、人生感も大きく変わった。
  アメリカ研修前の人生観はあきらめが先行したが、研修後はロマンを抱くようになり、人々の“しあわせ”につながる努力に裏打ちされた生きがいとやりがいを求めるようになった。
  また、短期決戦型ではなく、長期計画に基づいて行動するようになった。
  具体的には、
  ・思いつきではなく、方向、方法、手順を踏む 
・表面的(改善)ではなく、根本的(改革) 
・部分的ではなく、全体的(山) 
・一面的(1提案)ではなく、多面的(3提案) 
・我流アイデア(学ばない)ではなく、先例から教訓(定石)を学ぶ 
・売上高ではなく、客数(店数)
  をそれぞれ重視するようになった。
  私は、この長期計画なくして成功した例は、過去にないと思っている。

┃世界一目指して

現在、ニトリグループは第2期30年計画のただ中にあり、世界一を目指し数々の活動を行
っている。
1.現在のニトリグループのビジネスモデルは、製造、物流、小売を一手に引き受ける製造物流小売業であり、実際、商品の85%を海外で自社開発し、自社輸入している。
2.海外の自社工場としては、1994年10月にニトリファニチャーインドネシアを、2004年2月にニトリファニチャーベトナムを立ち上げ、これら2つの工場がグループの家具開発・製造の拠点となっている。
3.海外物流の拠点としては、中国に上海プロセスセンターと恵州物流センターを持ち、物流効率の強化を図っている。
4.日常の暮らしに必要な質の良い商品が、手軽に、一度に手に入るというのが、ニトリグループの考える”買う側”の立場に立ったショッピングセンターであるが、ニトリグループでは、東大阪に続き全国で2箇所目のショッピングセンターとして、東大阪の約2倍の規模をほこるニトリモール相模原を2013年9月にオープンした。

このような活動の成果として、2013年10月に調査会社の日経BPコンサルティングが発
表したメッセージ認知率で、ニトリグループのメッセージである ”「お、ねだん以上。」ニ
トリ” が、前回の4位から今回は1位となった。
また、同社の一般消費者の企業ブランド評価で、ニトリは2013年の92位から2014年は
20位に上がった。

┃ロマンは国境をこえる

「欧米並みの住まいの豊かさを、日本の、そして世界の人々に提供する」というロマンを実
現するため、海外出店への挑戦も積極的に行っている。
1. ニトリグループでは、2007年に台湾に出店した後、2013年に米国に出店し、2014年には新たに中国に出店することを計画している。
具体的に2014年の出店計画を見ると、日本国内の40店舗に加え、台湾に5店舗、米国に3店舗、中国に2店舗を出店する予定である。
2. 調達面では、現在、世界24カ国に調達先が存在するが、世界各地への商品供給システムを構築していくため、今後さらなる調達先の開拓を目指していく予定である。

┃人材育成

1.私は、優秀な人材こそが企業にとっての宝であり、人さえ育てればお金もモノもあとから付いてくるとの信念を持っており、人作りには徹底的に時間と金をかけている。
2.年代ごとの人材育成という面では、20代は「作業をマスターし、理論を学ぶ」、30代は「課題に挑戦する」、40代は「数字を変化させる」、50代は「将来対策をする」、ということをそれぞれ目指してほしいと考えている。
3.尚、ニトリグループでは、毎週、品目、部門、店舗ごとに売り上げや利益を数値化して集計する「ウィークリー・マネジメント(週次決算)」を導入している。
  この導入によって、1週間ごとに細かく売り上げや利益を確認し事実を確定できるようになり、問題の早期発見だけではなく、次の週にはもう問題点の解決ができるようになった。

┃最後に

1. ニトリグループでは、以下の5つを成功の5原則と呼んでいる。
  ・ロマン(大志)
  ・ビジョン(長期目標)
  ・意欲
  ・執念
  ・好奇心
私は、その中では特にロマンとビジョンが大事であり、これらがあればあとの3原則は付いてくると考えている。
2. そして、目標を達成していくためには、やはり、良い人材を育てていくことが何より大事である。
そのために、社員がロマンやビジョンを共有し、それを実現するための計画や課題を作り、意欲、執念、好奇心を持ってそれに挑んでいくというのが私の理想である。

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