株式会社アインファーマシーズ 代表取締役社長 大谷 喜一 様

第7回ゲスト

otanisama



株式会社アインファーマシーズ 代表取締役社長

大谷 喜一様

日時: 2012年10月5日(金) 19:00~21:00
場所: 本郷キャンパス理学部1号館2階206号室
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/map/map02.html
ゲストスピーチテーマ: 「成長への挑戦」

紹介

1951年、北海道浜頓別町に生まれる。幼少期を札幌で過ごした後、浜頓別に戻り中学を卒業。1976年、日本大学理工学部薬学科(当時)を卒業後、薬剤師に。

杏林製薬(東京)を経て、1980年「株式会社オータニ」を設立。1988年、第一臨床検査センター代表取締役社長に就任(現任)1998年「株式会社アインファーマシーズ」に社名変更。2010年、東証一部上場。

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【関係リンク】
http://www.ainj.co.jp/

報告


普段、講演を滅多にされない大谷社長。今回は、東京大学プレミアム・サロンのために、特別にご講演いただいた。

┃臨床検査では1位になれない

1980年、28歳でドラッグストア株式会社オータニを設立。その後、81年に(株)旭川臨床検査センターを設立し臨床検査事業を始めた。

1980年代にM&Aを行い(グループ沿革中の、「1969年株式会社第一臨床検査センター設立」は買収した企業)、その際にベンチャーキャピタルを利用したことは先進的だった。1987年から88年にかけて、ジャフコ(当時:日本合同ファ イナンス)が5億円の投資をしてくれた。売上高5億円の会社にその金額を投資するというのは通常では考えられない。この決断は論理的な根拠ではなく、私の事業に対する覚悟が伝わったのではないかと思っている。数字を見る だけでは、とてもこのような判断にはならないだろう。

しかし、臨床検査事業を始めた当社だが、その分野の売上はトップ企業と比較すると10分の1だった。しかも、臨床検査市場は成熟マーケットであるため、トップを抜くことは出来ないということが分かっていた。そこで私は資金調達を 更に行い、異業種に進出しようと考えた。「次のステージに行こう」と多角化を進め、1994年には売上高70億円を超えてJASDACに上場した。その間に40億円ほど資金調達をしている。

┃成功の秘訣

自らを省みると、多角化するのは本業に自信が持てなくなった時だ。本業を伸ばせるのであれば多角化の必要がない。私自身もこうして資金調達をして多角化したものの、大失敗をした。1990年代後半のことである。 多角化というと、「シナジーがうまれる」などとよく言われるが、シナジーなどというものはないことが結果としてわかった。ドラッグストア経営だけではなく、ホームセンター、家電販売と次々に異業種へ参入したが、当時は 確かにシナジーがあると信じていた。しかし、同じ小売と言ってもホームセンターとドラッグストアは全く異なるビジネスだと分かった。

1990年代後半は日債銀(日本債券信用銀行 現あおぞら銀行)など銀行が破綻し大変厳しい時代だった。北海道は特にひどく、1997年の拓銀(北海道拓殖銀行)破綻をきっかけとして、沢山の事業仲間が失敗し追い込まれた。

当社は大きな危機感を持ちスピードを上げて不採算事業から撤退した。そして、調剤薬局事業へのフォーカスが早かったためうまく難局を乗り切ることが出来た。メインバンクの破綻という苦境をはね返し業界1位になることが出来たの はノウハウがあったからではないと考えている。「早い」ということが大事なことだった。

調剤薬局市場が1兆円のときに7兆円にまで成長するだろうと考え調剤薬局を積極展開してきた。資金調達のスピードが早かったために出来たことであると思う。医薬分業の推進が国の主導で行われてきたことも後押しとなったが、振り 返ってみると必ず、大事な場面で出会った方の支援によって難局を乗り切り、大きく成長することが出来たということは言える。

失敗の影響は非常に大きく、1994年の店頭公開(現JASDAC市場)時代についた5,200円の株価をその後18年間超えることが出来なかった。もちろん増資を行ってきたことが大きな要因ではあるものの、本年8月にやっと上場来高値を更新 することが出来た。つまり、失敗とはそれだけ尾を引くものだ。

┃更なる成長への心構え

私は今後も事業をフォーカスしつづけ、更に素晴らしいサービスを提供したいと考えている。

しかしながら、今や病院ですら淘汰されている時代でクリニック・病院の数は、全国で11万程度だ。対して、調剤薬局はマーケット拡大に呼応するように5万3000件に増えている。今後も全てが生き残っていけるわけではないだろう。医 療費自体は増え、社会保障費も100兆円を超えているが、社会保障費の抑制がいつ行われるか判らない。新しい高価な新薬も出てくるが、日本で使用している薬のほとんどはもうすぐパテントが切れ、すぐにジェネリックが出てくる。調剤 薬局もいずれ淘汰されていくだろう。マーケットとはそういうものだし、30年、山ほど企業の盛衰を見てきた。その中で生き残るためにはどうしていったらいいのだろうか?こうして講演している当社も、常に、危機感・緊張感 を持っている。

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