フェニックス・グループ・ホールディングス 会長 荻野 正明 様
第3回ゲスト
フェニックス・グループ・ホールディングス 会長
荻野 正明 様
日時: | 2012年4月26日(木) 19:00~21:00 |
場所: | 伊藤国際学術研究センター中教室(本郷キャンパス) http://www.u-tokyo.ac.jp/ext01/iirc/access.html |
ゲストスピーチテーマ: | 「日本と香港 - 社会システムと住民の意識の差が生み出すこれだけの違い」 |
紹介
1941年大阪生まれ。神戸外国語大学卒業。繊維商社勤務等を経て、1970年現在もパートナーであるアンソニー・キョンを含め、総勢4人の所帯でフェニックス・香港をスタート。
1986年イタリアのプラダ(PRADA)とアジア市場での独占販売権の契約を締結。香港での1号店をペニンシュラホテルに、香港島のセントラルビルに2号店をオープンする。その後の2年間にシンガポールの伊勢丹、ラッフルズホテルにも店舗をオープンさせた。
1992年自社ブランドとしてアンテプリマ(ANTEPRIMA)を立ち上げる。
1996年世界中のライフスタイルと高級食品を展開するシティースーパー(Citysuper)を立ち上げる。
現在、アンテプリマは順調に成長し、世界で80店舗を展開中。同ブランドのクリエーティブ・ディレクターである妻の荻野いづみは、ミラノコレクション中ただ一人の日本人女性。今後は中国で多くの出店が予想されている。シティスーパーも順調に店舗を増やし、香港に4店舗、台湾に3店舗出店した後、2010年6月、上海に中国での1号店を開店した。2012年1月現在関連する小型店舗を含めると17店舗を数える。中国出店も2012年からの加速が予測されている。
現在は、グループ各社をFenix Group Holdings Ltdにまとめ、会長を務めている。
【関係リンク】
http://www.anteprima.co.jp/index.html
http://www.citysuper.com
報告
1966年に初めて香港に渡り、大阪の会社の駐在事務所から独立して、住みつき事業を立ち上げてきた。今70歳であるが、前半の67歳と直近の3年間で質的に大きく密度が違うと感じている。この3年間で穴の空いたジグソーパズルが一挙に完成したように、森羅万象が自分なりに体系化され良く理解できるようになった。
本日のテーマは一言でいえば日本と香港が、メンタリティー、考え方、社会の成り立ちなどで全く違い、事業運営や起業について天と地との差があることの説明である。
第一に税金が低いこと。香港では法人税・所得税は16.5%/15.5%でそれぞれキャップされるので、金持ちは加速度的により裕福になる。関税は一部を除きほぼゼロである。キャピタルゲイン課税、相続税もゼロである。日本では否認されやすい接待費なども税額控除が満額認められる。
第二に、小さい政府なので社会保障 ― 各種保険や年金制度がない。その代り政府系の病院に行けば、誰でも無料に近い料金で入院・手術ができるが、愛想がないのが欠点。
第三に、労使関係は柔軟であり双方に緊張感がある。社員はいつでも辞められるが、会社側もいつでも社員を解雇できる(どちらも1ヶ月の事前通告)。従って会社は優秀社員を引きとめるべく努力し、社員は即戦力なるべく勉強しよく働く
つまり香港社会を支える基本的イデオロギーとは、「自己責任」であり、システムとしては小さい政府、リベラリズムの最先端にある。香港社会制度の背景をまとめると
① 柔軟な労使関係のもたらす、好循環の自由競争
② 植民地時代における英国の良き影響
③ 自己責任原則
④ CPAや医者等のプロフェッショナルが高度に信頼され、
政府関与は最小である。
例えばわが国で悪名高い税務調査は皆無に近い
⑤ 所得税については源泉徴収なく全て給与の自己申告
⑥ 850万人の人口で 自由放任主義、市場主義 レッセフェールを貫いて
小さい政府でも8兆円の黒字。
去年は住民一人当たり一律6000ドル(6万円強)の還付があった。
以上のように香港はビジネスを行う条件が最適に整っている。これは上海と北京とは全く違う。後者が共産党一党支配の人治国家とすると、香港は英国式教育による法治都市国家である点が最大の違い。中国本土で事業を興そうと、日本の商社や製造業は直接投資と合弁事業で攻めたがことごとく失敗した。それは中国本土の真の強みであるコマーシャリズムを甘く見た結果である。自分が推奨する中国本土攻略は、香港チャイニーズと手を繋いでワンクッションおく、ビリヤード戦略である。
(この後、参加者とのQ&A)