アニコムホールディングス株式会社 代表取締役社長 小森伸昭様

第十五回 ゲスト komorisama

アニコム ホールディングス株式会社 代表取締役社長

小森 伸昭様

日時: 2017年10月31日(火) 19:00~21:00)
場所: 伊藤国際学術研究センター3階特別会議室
http://www.u-tokyo.ac.jp/ext01/iirc/access.html
ゲストスピーチテーマ: 「命に学ぶ経営戦略」 ~ペット保険から保険の概念を変える~

紹介

京都大学農学部入学、その後、経済学部に転部、卒業。
東京海上火災保険株式会社(現、東京海上日動火災保険)に入社。
経済企画庁(現、内閣府)国民生活局生活調査課に出向。
anicom(動物健康促進クラブ)、および株式会社BSP(現、アニコムホールディングス)を創業し、
代表取締役社長を務める。
アニコム損害保険株式会社代表取締役会長を兼任。
 


【関係リンク】
http://www.anicom.co.jp/company/

報告

 

東大TVで講演動画をご覧いただけます。
 http://todai.tv/contents-list/2017FY/premium-salon/vol15
 

<会社を作るきっかけ>
 大学時代、自分が何をしたいのか、自分探しを行っていたが結局答えは得られず、モラトリアム(自分がしたいことを見つけるまでの猶予期間)の延長を行う意味もあって就職した。東京海上日動を選んだのは、一言で言えば、万能細胞でいたかったから。銀行やメーカーへの就職も考えたが、銀行に入ると金のことばかり、つまり経済の血流ばかり眺めることになるし、メーカーに入って例えばひたすら煉瓦の縦横高さの話をするというのもやりたくない。その点、損害保険は自動車や建物などさまざまな物件が対象となるため、世の中を広く見ることができるので、それに合わせて自分を変化させることが出来ると思って選んだ。
会社に入ってしばらくして経済企画庁に出向した。経済企画庁の仕事というのは、どの業界が日本に貢献しているかを調査し、予算をつけること。そういった仕事をする中で、GDPをマイナスにしているのは損害保険であることに気づいた。事後的に保険が損害を担保することによりモラルが下がり、自動車保険が普及している国ほど自動車事故が多い傾向がある。そんな損保業界から転職しようと思ったものの手に職がない。色々悩んだが、結局、保険をメタモルフォーゼ(別のものに変化させること)すればよいという結論に至った。具体的には予防型の保険会社を作ること。保険会社が膨大なデータの統計から保険料を算出しているのなら、そのデータを使って、あらかじめどのタイミングで、どのような病気になるかを教えることが可能なはず。しかし、保険会社を立ち上げようとすれば、500億、1000億という金がかかわるわけで、20年前に一から保険会社を立ち上げた人などいなかった。金をかけずに保険会社を作るにはどうするか?自分の環境を見れば、弟は獣医師、自分も農学部の出身。ペット保険なら、なんとかなるのではないかと思った。犬や猫も脊椎動物という点では人間と変わりがない。壮大な社会実験ができるのではないかと思った。これが、ペット保険の会社をつくるきっかけとなった。共済から出発し、20年弱で経常収益約300億円、従業員数約500名の会社となった。
 


<仕事についてどう考えているか>
 仕事という概念はいつ生まれたか?ということについて考えてみたい。
例えば、単細胞生物には仕事という概念はないだろう。アリはどうか?働き蟻というのがいるし、仕事をしていると言ってもいいかもしれない。蜂も女王蜂、働き蜂というのがいて、分業体制をとっているようにも見える。
原始の地球の海には生命に必要な有機分子が豊富に存在し、やがて自己増殖できる原始的なバクテリアが誕生した。バクテリアというのは、死ぬ前に自分のコピーを作る。しかし、全くのコピー、完全コピーというのは、自分自身なわけで、仕事(分業)という概念は存在しない。しかしやがて変異という能力を得ると遺伝的多様性を獲得し、集団の生存のために個性の差を補い合うこと、つまり同種間での社会分業=仕事という概念が生まれてくる。
私も仕事が少しうまくいくようになって、成功し始めたとき、「私と同じようにやれ」と命令し、完全コピーを求めた。しかし社長と同じことをやる人を雇うなんてことばかりやっていると、やがて会社はつぶれてしまうということに気が付いた。自分という存在は有限であるのに対して、環境(仕事)は無限大だからだ。バクテリアが変異により多様性を獲得し、自己とは異なる様々な特徴を補完的に組み合わせて多様な変化の中を生き繋いでいるように、「自分でない者」が必要だと感じた。無限大の環境に有限な個体が対応していくためには、異なった有限な個体が無限の組み合わせを作ることで対応していくしかない。個性があると分業が可能となる。AとBが助け合うことができる。そこに仕事(分業)という概念が生まれ、組織としては長生きが可能となる。だから最近は「私とは違うことをやろうね」と言っている。しかし、どんなに個性があっても、皆、死ぬことはだけは同じだ。しかも自分の意思にかかわらず死はやってくる。こんなプログラムは自分では絶対に書けない。
分業により危機を脱し、生き延びることが可能となる。しかし、その対価として自分が死ぬことを求められる。新しい個体が生まれても古い個体=親が生きていたら子を殺してしまう。会社にあてはめれば、上司がずっと上司だと部下は育たないということだ。ずっと私が社長でいると会社はダメになるのかも知れない。
 


<ペット業界は何の分業?>
 もともと私は動物好きで、最近は、ミーアキャットと暮らしている。西アフリカ原産で、ポピポピというような鳴き声で50種類くらいの言葉を持っていると言われている。ペット業界は、動物の命を命として扱っている、すなわちモノとして扱っていない稀有な業界であるが、動物の方からみれば、大きなお世話で、彼らは自然に返してほしいと思っているかもしれない。
我々人間は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しているわけで、人間だけだと死んでしまう。一方で、植物が二酸化炭素を吸って酸素を出してくれるおかげで生きていける。先ほど言ったように有限の個性が無限の組み合わせで生きているわけだ。
昨今、先進国では少子高齢化などさまざまな問題を抱える中で、孤独を望みながらも友人がほしいという人が増えている。そんなわがままをかなえてくれるのがペットだとも言える。ペット業界は愛情の育成や癒しに役立ち、「アンチ孤独」を担っている。この世の中で一番厳しい刑罰は死刑ではなく、無期懲役・独房入りだという。孤独が一番厳しいわけだ。ペットは孤独を解消し、人間の能力を拡張し、免疫力アップやアイディアの発想を豊かにしてくれる。命とは無限の環境変化に対して、有限の個体が恒常性を保つ戦いである。個体の多様性は有限であるが、個体の相互作用で環境変化に対応しようとしているわけだ。
 


<創業の想い>
 従来の保険会社は事故が起きたら保険金を支払うというビジネスモデルをとってきた。これを予防型、つまり事故を生まない仕組みに変えたい。保険会社に集積する膨大な保険金請求データに基づいて未来の事故を予測し、その事故を予防することにより新しい価値を提供する保険会社を創り出したい。
犬猫の場合、人間がデータに基づいて病気にならないようにコントロールすることは比較的容易にできる。自分で勝手にクーラーをつける犬はいないし、自分で勝手に冷蔵庫を開けてビールを飲む犬はいないからだ。飼い主が気をつけることにより、ペットが寿命を目一杯使えるようにしたい。
犬猫というのは、いわば近親婚のかたまりで、多くの遺伝病がある。これは言わば、オオカミから可愛い犬を創り出す際に生まれたもので、ティーカッププードルのような可愛い子を作りながら、遺伝病をなくすというのは難しい。しかし遺伝病を持っていても発症しなければよいわけで、この遺伝子的欠損を補うと近時注目されているのが腸内細菌だ。腸内細菌は、犬、猿、人間で異なるし、同じ犬でもド―ベルマンと柴犬とでは異なる。それぞれの動物は食性や習性などが異なるが、同様に腸内細菌叢の構成にも違いがあり、それぞれの動物種に応じた細菌叢が形成されている。腸内細菌叢を見ることで、病気と健康の間を見える化し、薬やサプリメントに頼らない健康維持方法を提案し、腸内細菌叢レベルでペット、飼い主ともに健康になる保険を実現したいと考えている。


<ペット保険のビジネスモデル>
 今までもペット保険を扱った会社はたぶん100社以上あったと思うがほとんどつぶれた。その原因は、飼い主が一旦動物病院で全額支払ってから事後的に保険金を請求するという、面倒なやり方をとっていたからだ。当社のビジネスモデルはペットの保険証を提示すれば支払いは自己負担のみという人間の健康保険と同じ仕組みをとっている。これと同時に当社独自のカルテ管理システムを普及させ、一方で動物病院の事務負担の軽減を図るとともに、一方で、どのような検査を行ったのか、どのような薬を使ったのかがわかるようにし、虚偽申告ができないようにしている。またこのシステムを通じてさまざまな情報収集を行い、分析をおこなっている。
ペットは、私たちの心を灯してくれる世界一かわいい「心の発電所」である。大きなエネルギーをくれるペットが幸せでいられるような仕組みを今後も作っていきたい。

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