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書籍名

「華人」という描線 行為実践の場からの人類学的アプローチ

著者名

津田 浩司 (編)、 櫻田 涼子 (編)、 伏木 香織 (編)

判型など

392ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年3月31日

ISBN コード

978-4-89489224-8

出版社

風響社

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「華人」という描線

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「華人」(あるいは「華僑」) について研究をする。そのために、「彼ら」が暮らしている所に赴き、実地調査をする。そして、「彼ら」が持っているとされる「華人らしさ (華人性)」なるものに注目した上で、結論として「彼ら」がいかに「華人 (的)」であるかを語る…。
 
「華人」に関する学問 (差し当たり「華人学」と呼ぼう) ではこれまで、いわゆる同化 (現地化、土着化) 論や再華人化 (再中国化) 論などのパラダイムのもと、「彼ら」の文化・伝統要素、規範意識がいかに持続・変容しているか、あるいは「彼ら」がそれらをいかに利用・流用しているかを、繰り返し報告してきた。しかし、そこでの議論構成は上で幾分戯画的に示したように、非常にしばしば循環論的なものとなりがちであった。たとえば現地化に関する議論でいっても、20世紀後半に「落葉帰根から落地生根へ」などとして、移住先の地に生活基盤を持ち同地にアイデンティティを抱く人々の姿を捉える研究が盛んに登場したが、そこでの研究対象 (=「彼ら」) は、究極的には「華人」という「根」と「葉」を持つ本質的に同種の実体として措定され、またその対象措定の妥当性を正当化するかのように、「彼ら」の「華人としてのアイデンティティ」(の変容) がことさら焦点化されてきたのである。
 
こうした本質主義的議論構成が、他でもない、「華人について」何某かを明らかにしようとする問いの立て方 (とそれに伴う調査のあり方) により招来されているのだとしたら、本書はその落とし穴にはまることを避けるべく、むしろ具体的な行為や現象が「華人で」語られ記憶・想像される、その瞬間を微細に捉えようとした試みだと言えよう。6名の執筆者は、これまで東南アジアを中心とする各地の「華人」社会で、文化人類学・地域研究・民族音楽学などをベースに実地研究を重ねてきた若手研究者たちであり、それぞれがそれぞれのやり方で上述の循環論を乗り越えるための方途を模索・提示している。ただし、いずれの執筆者も共通して、ある行為や現象の当事者が「華人であること」に説明の論拠を丸投げするのではなく、誰によってどのような意味でそれら行為や現象が「華人で」語られたり了解されるのかを、当の文脈や過程を丁寧に描き出すことに主眼を置いている。
 
冒頭で述べた議論構成上の落とし穴は、何も「華人学」に特有のものではなく、いわゆる対象に規定された学問領域 (~についての学) であれば否応なく陥ってしまう類のものであると言えよう。ある行為や現象の当事者を特定の主語 (=「主体」、本書の場合「華人」) に固定化して捉えるのを一旦留保したところに、一体どのような領野が広がるのか。本書は、いかなる場・プロセスで誰により何が「華人で」語られ了解されているのかを位置づける作業から見えてくるその領野こそが、「華人学」を循環論から脱却させヴァージョンアップするための重要な足掛かりになることを、事例に即しつつ主張するものである。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 津田 浩司 / 2016)

本の目次

まえがき
第一部 理論篇
 第一章 序論 -「華人学」の循環論を超えて (津田浩司)
 第二章 社会現象としての「対象」をいかにして捉えるか - 行為中心的アプローチの可能性 (櫻田涼子)
第二部 「華人」という枠組みを問う
 第三章 タイで「華人性」を考える - ある「華人廟」からの問い (玉置充子)
 第四章 上座仏教を実践する「華人」たち - マレーシアの上座仏教徒についての考察 (黄 蘊)
 第五章 オランダ在住「プラナカン」の語りに見られる「華人性」の再検討(北村由美)
第三部 想像された「ホーム」、記憶の中の「ホーム」
 第六章 甘いかおりと美しい記憶 - マレー半島の喫茶文化コピティアムとノスタルジアについて (櫻田涼子)
 第七章 つながりに生きる -「チャイニーズ」の "roots " と "routes " に関する考察 (奈倉京子)
第四部 実践の深みへ
 第八章 シンガポールのハングリー・ゴースト・フェスティバルとスペクタクル化する儀礼(伏木香織)
 第九章 インドネシアの国家英雄ジョン・リー -「華人」という「主体」の物語を問う (津田浩司)
あとがき

関連情報

書評:
『東南アジア - 歴史と文化』第46号 2017年5月刊

『華僑華人研究』第14号 2017年11月刊

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