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白い表紙にサッカーボールを投げている子供の写真

書籍名

教育工学選書II 7 インフォーマル学習

著者名

日本教育工学会 (監修)、 山内 祐平 (編著)、 山田 政寛 (編著)

判型など

192ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年1月1日

ISBN コード

978-4-623-07439-6

出版社

ミネルヴァ書房

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インフォーマル学習

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情報化の進展により、学校外の学習機会が増加している。eラーニングによる在宅学習やユビキタス機器を用いた体験学習を始め、ワークショップ、サイエンスコミュニケーション、博物館、企業における人材育成などの領域において、情報通信技術を活用した生涯学習の基盤が整いつつある。また、初等中等教育における総合的学習の時間や大学のプロジェクト学習などにおいて、学校外学習と連動する試みが行われるようになってきた。シリアスゲームやソーシャルラーニングなどICTを利用した新しい方法も導入されつつある。
 
本書はこのようなインフォーマル学習について教育工学の観点から行われた研究をまとめた書籍である。
 
OECDでは、インフォーマル学習を「仕事、家庭生活、余暇に関連した日常の活動の結果としての学習」として定義しているが、この本では「学習(学習目標、学習時間、もしくは学習支援の観点から)としては明瞭にデザインされていないが、計画された活動に埋め込まれた学習」であるノンフォーマル学習もあわせて広義のインフォーマル学習として取り扱っている。
 
幅広い領域で行われている研究を概観できるよう、教育工学会の論文に掲載されている研究を分類した上で、その他の領域について実践・研究が進んでいる子どもの発達を促すインフォーマル学習に特化させ、方法開発について教育工学会の特徴であるICT利用に焦点化する形で構成している。
 
序章: 教育工学とインフォーマル学習 (担当: 山内祐平)
1章: 生涯学習施設とインフォーマル学習 (担当: 美馬のゆり)
2章: 職場とインフォーマル学習 (担当: 荒木淳子)
3章: 大学教育とインフォーマル学習 (担当: 河井先生)
4章: 子どもの発達とインフォーマル学習 (担当: 佐藤朝美)
5章: ワークショップとインフォーマル学習 (担当: 森 玲奈)
6章:ICTとインフォーマル学習 (担当: 山田政寛)
終章: 変化する社会とインフォーマル学習 (担当: 山内祐平)
 
それぞれの章では、第一人者が各領域におけるインフォーマル学習の展開についてレビューするとともに、教育工学における位置づけについて論じている。この本が今後の発展が期待されるインフォーマル学習に関して灯台の役割を果たし、新たな研究や実践につながることを期待している。
 
なお、本書は教育工学選書として刊行されている。インフォーマル学習の構成法や評価法などについてさらに知りたい場合には、教育工学選書の関連する巻を手に取っていただくことをおすすめする。

(紹介文執筆者: 情報学環 教授 山内 祐平 / 2016)

本の目次

序章 教育工学とインフォーマル学習
1 はじめに
2 教育工学とインフォーマル学習
 3 学習科学とインフォーマル学習
 4 生涯教育とノンフォーマル教育
 5 OECDによる定義
 6 本書におけるインフォーマル学習
 7 教育工学会における研究動向
 8 研究内容による分類
 9 本書の構成
第1章 生涯学習施設とインフォーマル学習
 1.1 生涯学習とは
 1.2 学習の改革と生涯学習社会の出現
 1.3 学習の場としての生涯学習施設
 1.4 教育工学における先行研究1
 1.5 科学教育における研究
 1.6 来館者研究
 1.7 科学教育以外の研究
 1.8 博物館閲覧支援システムの開発
 1.9 教育工学の定義と研究対象
 1.10 教育工学研究の方法
 1.11 学習環境の構成要素
 1.12 教育工学が提供できること
 1.13 今後の可能性
第2章 職場とインフォーマル学習
 2.1 職場における学習への注目
 2.2 職場とインフォーマル学習に関する諸理論
 2.3 教育工学における諸研究
 2.4 今後の課題
第3章 大学教育とインフォーマル学習
 3.1 本章の目的と構成
 3.2 大学教育におけるインフォーマル学習の拡がり
 3.3 大学教育におけるインフォーマル学習の研究方法
 3.4 大学教育とインフォーマル学習の可能性
第4章 子どもの発達とインフォーマル学習
 4.1 子どもの発達について
 4.2 子ども期におけるインフォーマル学習の概要
 4.3 子ども期におけるインフォーマル学習とICT
 4.4 研究の事例
 4.5 子ども期への展開
第5章 ワークショップとインフォーマル学習
 5.1 ワークショップのはじまり
 5.2 ワークショップの拡がり
 5.3 ワークショップの研究方法
 5.4 ワークショップの可能性
第6章 ICTとインフォーマル学習
 6.1 ICTが使われるインフォーマル学習
 6.2 ICTを使用したインフォーマル学習の研究事例
 6.3 ICTを使用したインフォーマル学習の評価
 6.4 ICTとインフォーマル学習に関する研究のこれから
終章 変化する社会とインフォーマル学習
 1 変化する社会
 2 新しい能力
 3 教育工学の使命
人名索引 / 事項索引

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