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山吹色の表紙

書籍名

東アジア海域叢書 中世日本の王権と禅・宋学

判型など

368ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年3月29日

ISBN コード

9784762929557

出版社

汲古書院

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中世日本の王権と禅・宋学

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科学研究費補助金「東アジア三国の正史に見る王権理論の比較」の研究成果報告論文集。日本史で中世と呼ばれる時期を中心に、外来思想が王権理論構築に果たした役割を探究する。儒教の新思潮たる宋学を日本にもたらしたのは禅僧たちであり、宋学は五山文化を構成する要素の一つであった。本書は、禅と宋学が中世以降の日本思想に新たな刺激を与えたことを解明していく。
 
井澤耕一「東アジアにおける祖先祭祀の諸相――中国、朝鮮、日本を例にして」は、東アジア諸国における皇帝・王などの為政者による祖先祭祀の諸相を、宗廟の創設・変遷から扱う。まず、宋代太廟制の特徴や変遷、元・明との類似点を述べる。
 
山内弘一「朝鮮王朝建国神話の創出」は、高麗から朝鮮への易姓革命を、朝鮮王朝の当事者たちがどのように権威づけ正当化していったのか、健元陵神道碑、『龍飛御天歌』、『高麗史』を分析して述べる。
 
伊東貴之「東アジアの「近世」から中国の「近代」へ――比較史と文化交流史 / 交渉史の視点による一考察」は、まず朱子学から陽明学への流れ全体を「近世儒教」と措定したうえで、同じく「近世」の語をもって呼ばれる日本の江戸時代との比較を行う。
 
ダニエル・シュライ「ヨーロッパと日本の中世における神聖王権の可能性を巡って――フライジングのオットーと慈円の歴史思想を中心に」は、時代的には重なるものの属する文化や歴史的背景を異にする二人の思索者の比較を通して見た王権論の考察である。

水口拓寿「「尼父」と「大神宮」――『古今著聞集』神祇篇第十二話の一解釈」は、某人の夢に孔子が現れて大学寮の孔子祭祀 (釈奠) で犠牲獣ではなく植物を供えるに至った理由を語る説話に注目して、儒教儀礼の日本化譚を分析する。
 
近藤成一「天皇の譲位と院政——鎌倉時代を中心に」は、天皇の譲位がどのような政治状況のもとで行われ、また逆に天皇の譲位がどのような政治状況を作り出したのかを考察している。
 
ガエタン・ラポー「南北朝動乱期の王権と調伏法――文観著『逆徒退治護摩次第』の秘密修法」は、文観房弘真の「逆徒退治護摩次第」をもとに後醍醐王権における宗教儀礼を分析する。
 
小島毅「中巖円月が学んだ宋学」は、元に留学して帰朝した臨済僧中巖がかの地で得た宋学についての知識をどう咀嚼したかを論じている。
 
保立道久「大徳寺の創建と建武親政」は、王権との深い関わりのなかで南浦紹明・宗峰妙超の法統に始まった大徳寺が、持明院・大覚寺両統の対立とどう関わったかを扱う。
 
陶徳民「明治国家成立期の水戸イデオロギーに関する考察――「大日本史完成者」栗田寛の勅語講釈を中心に」は、『大日本史』編纂作業を終結させた人物の教育勅語解釈を対象に、明治時代の国家神道成立の思想史的背景を描いている。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 小島 毅 / 2018)

本の目次


井澤耕一「東アジアにおける祖先祭祀の諸相――中国、朝鮮、日本を例にして」
山内弘一「朝鮮王朝建国神話の創出」
伊東貴之「東アジアの「近世」から中国の「近代」へ――比較史と文化交流史 / 交渉史の視点による一考察」
ダニエル・シュライ「ヨーロッパと日本の中世における神聖王権の可能性を巡って――フライジングのオットーと慈円の歴史思想を中心に」
水口拓寿「「尼父」と「大神宮」――『古今著聞集』神祇篇第十二話の一解釈」
近藤成一「天皇の譲位と院政――鎌倉時代を中心に」
ガエタン・ラポー「南北朝動乱期の王権と調伏法――文観著『逆徒退治護摩次第』の秘密修法」
小島毅「中巖円月が学んだ宋学」
保立道久「大徳寺の創建と建武親政」
陶徳民「明治国家成立期の水戸イデオロギーに関する考察――「大日本史完成者」栗田寛の勅語講釈を中心に」
 

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