東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

女の子と男の子の子どものイラスト

書籍名

イラストBOOK たのしい保育 子どもの「じんけん」まるわかり

著者名

汐見 稔幸、 新保 庄三、 野澤 祥子

判型など

144ページ、B6判

言語

日本語

発行年月日

2021年10月

ISBN コード

978-4-324-10992-2

出版社

ぎょうせい

出版社URL

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子どもの「じんけん」まるわかり

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本書は、子どもの権利について、保育実践者や保育に関心のある方向けに執筆された本です。子どもの権利の基本的な考え方とともに、保育現場での事例を紹介し、実践に即して子どもの権利について考える契機となることを企図したものです。「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効した、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。日本は1994年に批准しています。それから30年近くを経ようとしている2023年4月からは、子どもの権利の基本原則を理念とする「こども基本法」が施行されます。子どもの権利について改めて考えていこうとする機運が高まっているのではないでしょうか。
 
本書は、3つの章からなっています。それぞれの章を「STEP」として、3つのSTEPで、保育現場での子どもの権利について考えられるように構成されています。
 
STEP1では、人権および子どもの権利の歴史をひもとき、人権や子どもの権利がなぜ、どのように成立してきたかをわかりやすく説明しています。さらに、子どもの権利条約の基本原理を述べた上で、保育現場で何ができるかを提案しています。
 
STEP2では、子どもの権利条約の父といわれる、ポーランドの小児科医コルチャック先生の思想と実践について述べています。コルチャック先生は、ユダヤ人の孤児のための施設を作りました。第二次世界大戦中、その子どもたちを守り、やがて彼らと共に収容所に送られます。コルチャック先生の生き方、考え方から子どもの権利に立った実践の本質について考察します。
 
STEP3では、実際にあった保育の事例から、子どもとの具体的なかかわり方について考えます。挙げられた事例からは、実践で子どもの権利の考え方を踏まえることの難しさが窺われます。一方で、子どもたちの意見を聴き、多様な子どもたちの参加を保障することで、保育の実践がいかに豊かになりえるかも示唆されています。
 
最近、保育の場での「虐待ではないか」と疑われるようなかかわりについて大きく報道され、社会に衝撃を与えています。その要因として、保育者の待遇や人員配置などの構造的な問題を無視することはできません。しかし、一方で、そうしたかかわりを防ぐために、保育に関わる人々が子どもの人権についての理解を深めることも喫緊の課題となっています。本書が、そのために少しでも寄与することができれば幸いです。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 准教授 野澤 祥子 / 2023)

本の目次

はじめに

STEP1 人権を大切にするということ――なぜ子どもの権利を学ぶのか
STEP2 子どもの権利条約の原点を探る――コルチャック先生と子どもたち
STEP3 事例を通して子どもの権利を考える

関連情報

東京大学大学院教育学研究科附属 発達保育実践政策学センター
http://www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp/
 
書評:
「保育者が持つべき子の人権意識解説」 (日本教育新聞 2021年12月13日)
https://www.kyoiku-press.com/post-238106/

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