東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

ウズベキスタンからの移民が礼拝する写真など

書籍名

ウズベク移民と日本社会

著者名

ティムール・ダダバエフ、 園田 茂人 (編)

判型など

180ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2023年6月1日

ISBN コード

978-4-13-056127-3

出版社

東京大学出版会

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ウズベク移民と日本社会

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2018年10月、入管法改正案が閣議決定され、2019年4月から改正入管法案が施行されるようになりました。これも従来の技能実習制度を見直し、日本が外国人労働者を積極的に受け入れる方向へ舵を切ったからだと理解されています。もっともそれ以前から、制度の見直しを求める声はありました。2008年から人口は減少しており、将来の労働力不足を危惧する声が強かったからです。実際、労働力不足を海外からやってきた外国人が埋める現象は長く続いており、法律が現実に追いついたとも言えます。
 
中央アジアに位置するウズベキスタンからの移民も、日本の労働力不足を補う役割を果たしています。事実2010年代になってウズベク移民、とりわけ日本語学校生の数が増えたのは、彼らが日本への出稼ぎを魅力あるものと見なすようになったからです。日本に行けば学費も稼げて、母国に仕送りもすることができる。そんな甘言を耳にして、多くの若者が日本に渡ってくるようになったのです。
 
本書『ウズベク移民と日本社会』は、編者の一人である筑波大学のダダバエフ教授を中心にして実施してきたウズベキスタンから来日してきた若者を対象にしたインタビューや、筆者がウズベキスタンの大学生を対象に行った質問票調査の結果などを踏まえ、なぜ2010年代になってウズベク移民が急増することになったのか、彼らが日本にやってくる動機はどのようなもので、彼らは来日後どのような生活をし、これをどのように意味づけているか、そして将来、どのようなプランを持っているかを明らかにすることを目的に執筆されました。ウズベキスタンから欧米に出て行った移民に関する調査研究は多いものの、日本にやってきた移民に関する調査研究はほとんどありません。人の国際移動が起こるには一定の条件が整わなければならないのですが、ウズベキスタンと日本の間に、こうした条件が整いつつあることが本書の刊行を可能にしました。
 
ウズベク移民を対象にしたインタビューは興味深いもので、彼らの多くが出稼ぎ者メンタリティーをもち、日本での定住願望がさほど強くないこと、母国への仕送り金を捻出するために劣悪な生活環境に置かれていながら、これをイスラムでの「修行」とみなし、日本での生活を肯定的に捉えていること、とはいえ母国におけるジェンダー規範や文化規範を日本に持ち込んでいるため、これをどう評価しているかによって日本の生活をどう評価するか変わってくることなど、ハッとする知見も少なくありません。また、現地への日本語支援が日本への人の移動の「マッチングポンプ」になっていることや、送出し国が開放的な政治体制に変わることで移民指向が強まったことなど、本書を執筆する過程で筆者が学んだことも少なくありません。
 
なお本書にはThe Grass Is Always Greener?: Unpacking Uzbek Migration to Japan (2021, Palagrave Macmillan) という姉妹品があります。英語に自信のある方は、こちらも読んでみられるといいでしょう。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 園田 茂人 / 2023)

本の目次

はじめに
 
第1章 ウズベキスタンから世界へ
第2章 日本語学校という選択――入国の動機と経路
第3章 教育から労働へ――教育=労働移民の現実
第4章 越境するジェンダー――女性移住者の経験
第5章 文化実践としての国際移動――「ウズベクらしさの力学」
第6章 移住先としての日本と韓国
第7章 ウズベク移民と日本の将来

関連情報

関連書籍:
Timur Dadabaev ed., The Grass Is Always Greener?: Unpacking Uzbek Migration to Japan (Palagrave Macmillan 2021年)
https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-16-2570-1
 
関連イベント:
「Central Eurasian Views of East Asia: Findings from Asian Student Survey 2018」 (日本財団 中央アジア・日本人材育成プロジェクト 2022年2月21日)
https://centralasia.jinsha.tsukuba.ac.jp/activity/6211

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