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白い表紙の真ん中にエメラルドグリーンの模様

書籍名

やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ よくわかる歴史社会学

著者名

佐藤 健二、 野上 元、 祐成 保志 (編)

判型など

216ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2025年4月30日

ISBN コード

9784623098583

出版社

ミネルヴァ書房

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よくわかる歴史社会学

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本書は、歴史社会学の教科書・入門書である。本書の狙いを一言で表現するなら、「過去の社会についての社会調査はどのように行えばよいのか」という問いに答えることである。
 
社会調査といえば、アンケート調査、インタビュー調査、参与観察といった手法を用いて、いまこの社会で起きている現象をとらえる営みであると理解されるかもしれない。しかし、過去の社会も調査の対象となりうる。そして、現在の社会を対象とした社会調査がそうであるように、歴史社会学にも多様なアプローチがありうる。他方で、歴史社会学が拠り所とするのは資料であり、それらを収集し、配置し、読み解く身体的な実践である。ここには、共通した作法がある。本書は、このような〈多様性〉と〈共通性〉の双方を視野に収めつつ、多数の研究者の協働によって編まれた。
 
I章「歴史社会学への招待」は執筆者たちがそれぞれの歴史社会学をどのように展開してきたのか、いわば歴史社会学の「育て方」を解説している。あらかじめ定まった入口や順路があるわけではなく、自らの問題関心と理論的な研究対象と入手可能な資料をめぐって、独自のルートを切り開くことの重要性と魅力が語られる。
 
I章が個々の研究者ごとの〈多様性〉を強調するのに対して、II章「歴史社会学入門」は歴史社会学の方法としての〈共通性〉を論じている。そもそも社会学とはどんな学問なのか、歴史社会学と歴史学はどこまで同じで、どこが違うのか、歴史社会学は資料に対してどのように向かい合うのか、そして歴史社会学はどのように資料と出合うのか、といった主題が扱われている。
 
III章「歴史社会学的想像力の諸相」は、再び歴史社会学の〈多様性〉に焦点をあて、そのアプローチの広がりを伝えることをめざしている。身近にあるモノやありふれた出来事に含まれた歴史を、想像力を駆使して読み解き、「社会」としか呼びようのない力の作用を明らかにする作業の面白さを感じてもらいたいと思う。
 
IV章「さまざまな歴史資料・データ」は歴史社会学の〈共通性〉に着目して、基礎的な資料・データについて解説している。印刷物や文書だけでなく、映像、デジタルデータ、過去の社会調査も資料となる。さらに、語りを記録して資料を作り、残すことも歴史社会学の重要な役割である。
 
V章「歴史社会学の世界」は歴史社会学の古典として読み継がれるべき書物を紹介するブックガイドである。ここで取り上げた研究は、社会学の初志に込められた歴史的な視点、1970年代以降の社会史が与えたインパクト、日本の実証的な社会学における歴史研究、現代社会論としての歴史社会学という観点から選ばれた書物で、歴史社会学の〈多様性〉を体現している。
 
歴史社会学の〈多様性〉と〈共通性〉を縒り合わせるように進んできた本書は、VI章「収集・分析をはじめる前に」で両者を取り結ぶべく最後の着地を試みる。研究を駆動する問い、「データの質」の解読、「代数学/幾何学/博物学」という三つのアプローチ、「構造」の把握の重視と「個」への注目の両立、そして歴史社会学とはなにか、といったテーマが論じられる。
 
本書は、歴史社会学を体系的な知識としてではなく、方法の道具箱として提示することをめざした。それゆえ、読者の関心に応じて、どの項目からでも読みはじめることができる。それぞれの項目で扱われる出来事、方法、書物が、読者の「歴史社会学的想像力」を呼び覚まし、独自の探究への扉が開かれることを願っている。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 祐成 保志 / 2025)

本の目次

I 歴史社会学への招待
 1 メディアの重層を読む:怪物のうわさ(佐藤健二)
 2 音楽文化の歴史社会学:ジャンルが背負う歴史性(宮本直美)
 3 戦争の歴史/社会学:「社会学の出番」なのか?(野上 元)
 4 「心の病」の歴史社会学:メンタルヘルス文化の過去と現在(佐藤雅浩)
 5 セクシュアリティ:エロに歴史あり(赤川 学)
 6 家と家族:近現代におけるその変容(米村千代)
 7 住宅問題の構築史:住まいをめぐる反復と反転(祐成保志)
 8 つながり社会と無縁社会:「無縁」のもつ新しいつながりの可能性(中筋由紀子)
 9 祭り: 世代を超えた継承をもたらす歴史の作用(武田俊輔)
 10 社会学史:歴史社会学としての社会学史(出口剛司)
 
II 歴史社会学入門
 1 社会科学のなかの社会学:「意味」を問い,「理解」をめざす学問(高艸 賢)
 2 社会学における歴史分析の意義:史料にふれて社会を知る(赤川 学)
 3 歴史社会学における異文化理解:「作品」がつなぐ過去と現在(宮本直美)
 4 歴史社会学の居場所:歴史社会学に/だけにできること(野上 元)
 5 資料の生態:社会学的な歴史資料論/資料のメディア論(武田俊輔)
 6 資料の宇宙:図書館・文書館というフィールド(祐成保志)
 
III 歴史社会学的想像力の諸相
 1 ファミリーヒストリー:自分のなかに歴史をよむ(野上 元)
 2 裁判記録:討論形式で見出される多元的な「過去」(野上 元)
 3 消費者/〈消費者〉:消費を問題化する社会記述そのものの歴史性(林 凌)
 4 女性専門職:近代「女医」の歴史社会学(目黒 茜)
 5 自殺:「意志的な死」の成立(佐藤雅浩)
 6 被害者:「同情を寄せるべき他者」に関する規範の変容(佐藤雅浩)
 7 摂食障害:逸脱的な食行動はなぜ問題化されたか(佐藤雅浩)
 8 趣味:概念史からことばの意味を解きほぐす(塩谷昌之)
 9 日常生活の観察:対象としての大衆/主体としての大衆(祐成保志)
 10 持ち家と賃貸:レジームが生み出す傾斜(祐成保志)
 11 山車:歴史を具象化したコモンズとその作用(武田俊輔)
 12 民謡:資本主義と複製技術が再編したオーラルな文化(武田俊輔)
 13 「時代」:社会学の強みを活かすために(鈴木洋仁)
 14 馬券:モノ/メディアの「てざわり」(瓜生吉則)
 15 クィア・ヒストリー:非規範的な性の歴史をたどる(武内今日子)
 16 消臭:ケアワークの領域の拡大(中筋由紀子)
 17 「○○力」ということば:実在から動態へ(中筋由紀子)
 18 科学技術:「科学の体制化」と科学技術立国批判(馬渡玲欧)
 19 養育:子の養育とその担い手の歴史性(米村千代)
 20 食:日常的な営みの共同性とその歴史性(七星純子)
 21 論文:知識の制度(品治佑吉)
 22 宗教組織:信仰運動と組織改革運動のダイナミズム(宮部 峻)
 23 エアコン:日常を覆う密閉空間の人工空気(清水 亮)
 24 ミュージアム:近代が生んだパブリックな歴史の場(清水 亮)
 
IV さまざまな歴史資料・データ
 1 新聞・雑誌:出来事の「語られ方」をとらえる(佐藤雅浩)
 2 言論・言説:思考や認識をめぐる歴史資料(野上 元)
 3 芸術文化の資料とは:音楽の創作,演奏,流通(宮本直美)
 4 映像・映画:歴史/社会を映す鏡(野上 元)
 5 広告・CM:時代の価値観を映し出すテクスト(高野光平)
 6 インタビュー調査:声の背景を聞く・声なき声を聞く(中筋由紀子)
 7 組織文書:組織の自意識と社会認識(野上 元)
 8 地図:空間を重視する歴史社会学(野上 元)
 9 全集・著作集:個人アーカイブのテクスト空間(佐藤健二)
 10 デジタルデータベース:デジタル空間で歴史を編む(鈴木親彦)
 11 社会調査アーカイブ:歴史資料としての調査データ(祐成保志)
 12 マイクロデータの二次分析:計量歴史社会学(石島健太郎)
 
V 歴史社会学の世界
 1 現在の歴史的探究:マックス・ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」(赤江達也)
 2 比較社会学のファウンダー:エミール・デュルケム『自殺論』(中筋由紀子)
 3 礼儀作法が作り出す支配の構造:ノルベルト・エリアス『文明化の過程』『宮廷社会』(宮本直美)
 4 不定形な対象をどうとらえるか:ルース・S. コーワン『お母さんは忙しくなるばかり』(祐成保志)
 5 空気の管理による社会的区分:アラン・コルバン『においの歴史』(流王貴義)
 6 病気のイメージの歴史:スーザン・ソンタグ『隠喩としての病い』/サンダー・L. ギルマン『病気と表象』(佐藤雅浩)
 7 家と同族団を軸に伝統都市の200年を描く:中野卓『商家同族団の研究[第二版]』(上・下)(武田俊輔)
 8 組織としての家と宗教:森岡清美『真宗教団と「家」制度[新版]』『真宗教団における「家」の構造[増補版]』(米村千代)
 9 「生と社会」の厚い記述:内田隆三『国土論』(野上 元)
 10 個の人生にあらわれる構造の呪縛:見田宗介『まなざしの地獄』(佐藤健二)
 
VI 収集・分析をはじめる前に
 1 「問う」ことからはじまる:素材の発掘と問題の構築と(佐藤健二)
 2 資料の社会的存在形態の解読:「データの質」の問題(佐藤健二)
 3 資料分析の方法論:代数学/幾何学/博物学の想像力(佐藤健二)
 4 リストの力:全体を観察する作法(佐藤健二)
 5 固有名詞の力をコントロールする:構造変動としての歴史(佐藤健二)
 6 個人をどうとらえるか:「フィールドとしての個人」と「n次資料」(佐藤健二)
 7 歴史社会学とはなにか:歴史性の厚みにおける再帰性(佐藤健二)
 

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