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イスラームと性差別の問題を、さまざまな視点から

掲載日:2019年7月1日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 009

エジプトの首都カイロ中心部にある、最新宗教ファッションの店。店名は「ヌール・ファッション(光のファッション)」。さまざまなデザインのヒジャーブ(女性用外套+スカーフ)が並んでいる。

内戦、テロ、難民などと結びつけて語られがちなイスラーム社会を、偏見や誤解がなく理解するためには「ジェンダー」という視点を積極的に取り入れ、考え直してみることが必要ではないか。これが東洋文化研究所・長沢栄治教授の提唱する「イスラーム・ジェンダー学」の出発点でした。

「イスラームとジェンダー、と聞くと、多くの人が『抑圧されている女性』をイメージするでしょう。しかし、問題はそれほど単純ではありません。イスラーム社会における男女関係は、宗教・歴史・政治・法律・教育など、さまざまな要素が複雑にからみあって形成されています。それをさまざまな視点から一つずつ解きほぐしていけば、イスラーム社会の全体像が見えやすくなり、ジェンダーや差別といった人類の普遍的な問題についても、より深く考察する材料が得られると考えました」(長沢先生)

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エジプト地方部における結婚式の様子。肩車に乗っているのが花婿。イスラーム社会では男女の交渉が厳しく制限されているため、晴れて結婚できた花婿はしばしば喜びを爆発させる。

イスラーム・ジェンダー学を立ち上げるために結集したのは、中東政治、イスラーム法、アラブ近現代史、アラブ社会経済、イスラーム思想、アラブ文学、イスラーム女子教育など、各専門分野で活動する研究者たち。研究に多角的な視点を導入することで、「イスラームの文学・映画における女性とジェンダー」など、新たな研究テーマが次々に生まれています。

また、これらの問題について日本人の理解を深めてもらうために、プロジェクトとして、一般向け書籍を「イスラーム・ジェンダー学シリーズ」(全8冊)として刊行する予定。第1巻は「変わりゆく結婚と離婚(仮題)」。イスラーム教徒の結婚は、独特の細かい規定がある「家族法」で定められ、基本的に個人と個人の契約である点が特徴です。そんなイスラーム独自の結婚観と変わりゆく社会との関係を考察し、「人類にとって結婚とは何か」を深掘りする内容になるとか。

イスラームの男女問題がより多くの人の間で議論されれば、世界のジェンダー平等が実現に向けて一歩近づくと期待されています 。

このプロジェクトが貢献するSDGs

ジェンダー平等を実現しよう働きがいも経済成長も平和と公正をすべての人に住み続けられるまちづくりを

長沢栄治 教授 | 東洋文化研究所(取材当時、現名誉教授)

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