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水をめぐるアジア史を、空間解析から読み解いていく

掲載日:2019年7月10日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 012

 

近年、「水」をめぐる問題が世界で改めて議論されていますが、私たちの暮らすアジア地域では、「水」はもともと特別な意味を持っていました。

世界地図を見てもわかるとおり、アジアの広い地域が海洋・河川・湖沼などの水圏に覆われています。アジアで稲作文化が広く発達したのも、モンスーンがもたらす湿潤な気候のおかげ。季節的降雨は「天の恵み」であり、同時に洪水という「災厄」ももたらしてきました。

「そこで私たちは、『水』という新たな切り口から、アジア史を読み直してみようと考えました」。そう語るのは、この文理融合プロジェクトのリーダーであり、中国経済史が専門の城山智子教授です。

この研究がユニークなのは、歴史を読み解くプロジェクトでありながら、地理情報や気象情報に関するデータをもとに、過去をGIS(地理情報システム)で可視化しようと考えていること。歴史家はこれまで、古文書など文字情報を主に分析に使ってきました。この研究では、工学系研究科・川崎昭如特任教授らが、そうした歴史文献から得られる気象・水文関係の情報に、USGS(米国地質調査所)が提供する標高データやNOAA(米国大気気象観測庁)による降雨推計を援用し、過去の出来事を天候などの自然現象ごと再現しようと試みているのです。

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1931年5月31日から10月28日までの、長江氾濫のシミュレーション画像。当時のさまざまなデータをもとに、洪水による水没地域がどのように拡大していったのかを推測することができる。

たとえば、史上最悪の洪水災害といわれる1931年7月の長江大氾濫のシミュレーションでは、長江流域のそれぞれの地域が何月何日まで冠水していたのか、徐々に明らかになってきました。城山先生によれば、そういった氾濫シミュレーションに「何を」組み合わせるかが、自然と社会の空間的な理解(空間解析)には、重要になるとか。

「たとえば、洪水の地図情報に疫病患者数のデータを重ねれば、水の汚染がいつどのように拡大したか、コメ収穫量のデータを重ねれば、洪水が農業にどう影響したかを推計することができます。」と、城山先生。

これからの歴史学は、目で見てわかる学問へと発展していくのかもしれません。

このプロジェクトが貢献するSDGs

安全な水とトイレをみんなに産業と技術革新の基盤をつくろう海の豊かさを守ろう

城山智子 教授 | 経済学研究科

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