宇宙用から、地球用へ
このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。
FSIプロジェクト 013
皆さんは太陽電池が発電する仕組みをご存じですか? 太陽電池は、半導体を+と-の電極で挟んだ構造になっ ています。そこに光を当てると、半導体の中で電子の移動が起こり、この電子を電極が受け取ることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換されるのです。
「それだけに、太陽電池の性能は、使用する半導体の性質によって大きく違ってきます」。そう解説するのは岡田至崇教授です。
現在世界中で使われている太陽電池のほとんどが、半導体にシリコンを使ったタイプ。問題は、シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率が、理論限界に近づいていることです。
そこで今注目されているのが、ガリウムやインジウムなどレアメタルを使った半導体。たとえば、ガリウム+ヒ素、ガリウム+インジウム+リンなど、性質の異なる半導体を組み合わせた太陽電池では、シリコン系太陽電池の約2倍の変換効率を発揮することが知られています。シリコン系と同じ電力を半分の面積で得られるため、太陽電池の小型軽量化が可能になり、ドローンや自動車への搭載など、さまざまな用途が考えられます。
問題は、製造コストがシリコン系の100倍も高価なこと。そのため現在では、宇宙衛星用の太陽電池パネルなど用途がほぼ限定されています。
この変換効率が高い太陽電池をもっと安く製造できないか。まさにそれこそが、岡田先生らのグループの研究テーマ。目標は、2030年までに製造コストを現在の10分の1以下に圧縮し、その後は量産効果でさらなる低価格化を実現すること。目標が達成できれば、新たな太陽電池は日本の成長戦略の大きな武器になるだけでなく、それが世界に広く普及すれば、地球のCO2排出削減にも貢献できます。宇宙用から地球用へ、そして暮らしの中へ。岡田先生たちの挑戦は続きます。
このプロジェクトが貢献するSDGs
岡田至崇 教授 | 先端科学技術研究センター