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史料を理想的な形で未来に伝える

掲載日:2019年7月31日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

FSIプロジェクト 018

和紙の繊維の組成を分析するため、顕微鏡を用いて透過光観察している様子。史料編纂所では、2015年度から国宝島津家文書の修理事業に伴う調査研究をしている。

史料編纂所には、100年以上にわたって全国を採訪し、複製した史料をはじめ、寄贈・移管・購入等によって受け入れた多数の原本・写本類が所蔵されています。中には長い年月を経て、傷みや劣化が進んでいるものも多く含まれます。動乱の南北朝時代を生きた貴族・中院通冬(なかのいんみちふゆ/1315~63)の日記『中院一品記(なかのいんいっぽんき)』の自筆原本もその1つ。この史料を将来にわたって保存するため、2011~2015年度に本格的な調査と修復が進められました。

史料の修復には、まずは何が書かれているのかを読みとる調査が欠かせません。日記本文はもとより、紙背文書(しはいもんじょ)と呼ばれる裏面に書かれた文字も読み解きます。紙が貴重だった当時、送られてきた手紙や手元にあったメモなどを裏返して再利用していたのです。さらに本文や紙背の文字がどのような筆や墨で記されていたのか、紙が日記に再利用される前にはどのような形態だったのか、厳密な検証を進めました。その後、1紙ごとに修復を行い、乱れた配列を複雑なパズルを解くかのように並べなおし、なるべく当初の形に近いように整備しました。その結果、『中院一品記』は2017年に重要文化財に指定され、日記本文は史料編纂所が1952年から刊行している『大日本古記録』にまとめられました。

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『中院一品記』暦応五年(1342)三月七~十六日条(東京大学史料編纂所所蔵)

このように史料編纂所では、解体の際にしかできない調査を行ったり、装備を改めて史料の原態を復元したりするなど、修理の機会を活用した研究にも積極的に取り組んでいます。また、フィルムに移り変わる以前に写真の原版として用いられていたガラス乾板の保存方法や史料情報のデータ化などのノウハウを他機関にも提供しています。

「伝統的な技術と最新の技術を用いて、歴史研究の基礎となる史料を未来に伝えていくことは私たちの使命です」と同所技術部長の松井洋子教授は語ります。

このプロジェクトが貢献するSDGs

産業と技術革新の基盤をつくろう質の高い教育をみんなに

松井洋子 副所長/技術部長/教授 | 史料編纂所

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