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グローバルな視点で歴史をとらえなおす

掲載日:2019年8月7日

このシリーズでは、未来社会協創推進本部(FSI)で「登録プロジェクト」として登録されている、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する学内の研究活動を紹介していきます。

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「すべての人に共通する、ただ1つの歴史が存在するのではありません」と羽田正教授は指摘します。民族、国籍、宗教、性別、年齢などの違いによって、さまざまな歴史の見方があります。議論の中から互いの立ち位置の違いを意識し、過去の出来事に新たな意味を見出し、現代の私たちの世界を理解することが歴史の醍醐味だといいます。

そんな羽田先生が取り組んでいるのは、東京大学とアメリカのプリンストン大学、フランスの社会科学高等研究院、ドイツのベルリン・フンボルト大学およびベルリン自由大学の5拠点を結んだ「新しい世界史/グローバルヒストリー」研究です。ひとくちに世界史といっても、歴史学研究をこれまでリードしてきた欧米の視点でつくられたものがほとんどでしたが、そこに日本の視点を入れることで歴史を再検討する試みです。

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東京で開催された大学院学生のための第1回サマースクールの様子。過去5年間で東京、アメリカ、ドイツを経てフランスで開催され、2019年9月の第5回サマースクールは再び東京での開催となる。

「例えばこれまでの世界史では、『近代』はヨーロッパに始まると考えられてきました。そして19世紀に、教会にかわって政府が民衆の生と死の営みを管理するようになることは、近代の特徴だと理解されていました。ところが日本では、すでに17世紀に徳川政権が寺社奉行を通して宗教と人々の日常を管理しています。当時の日本は『近代』に入っていると言えるのでしょうか。日本の過去を無視して世界史は語れないのです」と羽田先生は説明します。こうした議論が過去5年間、定期、不定期に各国のシニア研究者と大学院学生の間で行われ、その共同研究の成果は日本語、英語、中国語、韓国語などに対応した出版物として多数刊行されています。

「日本の歴史を英語というグローバル言語で語ることで、歴史解釈の新しい材料を世界に提供できると考えています。今後は中国や韓国などのアジア各国とのネットワーク拠点を築くことを視野に入れて、グローバルヒストリーをさらに豊かなものにしていきたいですね」と羽田先生は歴史学の未来への期待を語ります。

このプロジェクトが貢献するSDGs

人や国の不平等をなくそう平和と公正をすべての人にパートナーシップで目標を達成しよう

羽田 正 教授 | 東洋文化研究所(取材当時、現東京カレッジ長)

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